Free【揺れる水産都市・第4部「海は変わった」】㊤海水温上昇

八戸沿岸の定置網に入ったシイラ。八戸港に水揚げされる魚種は年々変化している=2023年9月、八戸市第2魚市場
八戸沿岸の定置網に入ったシイラ。八戸港に水揚げされる魚種は年々変化している=2023年9月、八戸市第2魚市場

三陸沖は暖流の黒潮と寒流の親潮がぶつかる好漁場。北東北随一の港町・八戸は、その「海の恵み」に支えられてきた。

 八戸港は幾度も水揚げ量日本一を達成。時期や魚種によって好漁、不漁の波はあっても、業界は臨機応変に対応しながら海と共に発展を遂げた。

 海は変わった―。ここ数年、水産関係者は海洋環境の変化を肌で感じている。

 「この時期、あの場所に行けば取れた魚」が見つからず、「今おいしいはずの魚」は水揚げされなかったり、サイズが小さかったり。蓄積してきた経験や知識、常識が通用しない場面が増えてきた。

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 不振が続くイカ釣り漁業。2023年はさらに壊滅的だった。八戸柔魚釣船頭組合組合長で、同港所属船「第67源栄丸」の大橋社漁労長は「話にならないような状況だ」と危機感を強める。

 今季は春夏に北太平洋でムラサキイカ漁に従事した後、スルメイカを求めて日本海へ回った。好漁場として知られた日本海中央部の大和堆周辺だけでなく、北海道沖も、九州方面も「全然イカがいない」。

 資源量の減少や外国船の違法操業など、不漁にはさまざまな要因が絡むとされるが、漁場の状況について「例年の水温を保っていない」と指摘。海水温の影響も大きいと推察する。

 従来イカを取っていた海域での魚影は、水温上昇に伴って北上してきたとみられるマグロばかり。イカは釣り針の届かない海底近くへ潜ってしまったのか。1日操業して1匹も取れない、そんな日がどの船にもあった。

 小型イカ釣り船も実情は変わらない。八戸前沖も高水温が続いており、スルメイカの漁獲量は年々右肩下がり。燃油高騰にも苦しめられ、漁業経営は厳しさを増す。

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 八戸沿岸に寄りつく魚を漁獲する定置網漁にも異変が見られる。

 シイラやアオリイカ、ソウダガツオなどの南方系の魚が、一過性ながらも例年にないほど網に入った。成長魚・ブリの小型サイズであるイナダやワラサも、年間を通じて安定的に水揚げされ、主力魚種の一つに。一昔前であれば時季外れの年末に、型の良いサバが寄りついたのは、うれしい誤算だった。

 一方、収入の柱ともいえるサケは記録的不漁。海水温15度前後が生息の適温とされる、秋の味覚の代表格だが、太平洋側の漁獲量は大きく落ち込んだ昨季をさらに下回った。かつて1日で1隻千匹以上の水揚げがあったが、今は100匹に満たない日もある。

 「水温が高くなって、メインで取れる魚が変わってきた」。南浜漁協所属の定置網漁船「第58日の出丸」船頭の深川修一さんは実感を込め、「悲観しすぎず、取れる魚を大事にしたい」と語る。

 だが、漁の性質上、来遊する魚がいなければ経営は成り立たない。「黙って待つのではなく、将来のために何ができるのか、改めて考える時期に来ている」と強調する。

 
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