Free「五戸バオリ」に魅了され 大阪の女性、講座に参加 町移住への思いも強く

五戸バオリ作りに励む村上さくらさん
五戸バオリ作りに励む村上さくらさん

青森県伝統工芸品に指定されている編みがさ「五戸バオリ」。五戸町立公民館で2~7日に開かれた作り方を学ぶ講座に、五戸バオリに魅了され同町への移住も考えているという、大阪府豊中市の村上さくらさん(38)が参加した。「匠の技が魅力的。楽しく、すてきな出会いもたくさんあった」と村上さん。普段の生活を離れ制作に打ち込んだ6日間で、都会にない田舎の良さを実感したようだ。
 五戸バオリは同町蛯川地区が発祥。江戸時代末期に作られるようになり、農家の貴重な収入源だったとされる。故黒澤明監督の映画「夢」(1990年)の劇中に登場したことでも知られる。
 作り手は現在、同町の稲村幸男さん(67)ただ一人。講座は稲村さんを講師に毎年開かれており、今回で7回目を迎えた。
 村上さんは、自然素材を使った伝統工芸に関心があり、数年前から携わることができる移住先を探していた。津軽地方や竹細工が作られている大分県などを候補に検討する中で、五戸バオリを知り、「かっこいい」と感じて興味を持った。
 昨夏、東京都内で開かれた青森県主催の移住セミナーに参加。五戸町もブースを出しており、町担当者とつながりを持つようになった。今回、町から講座開催の知らせを受け、「まずは一度行って体験してみたい」と参加を決めた。
 八戸市内のホテルに泊まり、五戸までバスで通った6日間。「作業は緻密で、体力と根性がいる」。帰りのバスの車内では、いつもぐったりだったという。
 迎えた最終日。村上さんは形が見えてきたバオリの、つば部分の作業に取り組んでいた。完成も間近となり、「朝来て編んで、帰って寝て―の繰り返しだったが、とても面白かった」と充実した表情を見せた。
 滞在中は両市町の雰囲気にも触れ、田舎暮らしへの思いを強くした様子。「人間味があり、優しい人が多い。空気も食べ物もおいしい。移住したい気持ちは8割5分まで高まった」と笑顔で話した。移住した場合は、働きながら稲村さんに弟子入りし、五戸バオリを町内外にもっと広めたい考えだ。
 稲村さんにとっても次代の担い手は歓迎だ。現在は弟子が1人いるほか、高校2年生の孫も後継者候補という。稲村さんは「五戸バオリを選んでくれるのであれば喜んで教える。マスターするには数年かかるがね」と口元に笑みを浮かべ、村上さんの今後の決断を期待した。
 今回の講座に参加した3人の中には、静岡県浜松市に住む建築士の男性(60)も。家庭菜園用に理想的な帽子を探していたところ、映画「夢」で見た五戸バオリを思い出した。町観光協会を通じて稲村さんを紹介され、1週間分の仕事を調整して同町を訪れた。
 稲村さんは「以前も県外からの参加者はいたが、みんな熱心に取り組んでくれる。五戸バオリに興味を持ってくれることはうれしいね」とほほ笑んだ。