Free【藤井フミヤ展連載】㊥美意識 描きこんだ“細やかさ”魅力

「Girl in the mirror 13」(2020~21年)の1枚©FFM2024

藤井フミヤさんの絵画作品は、隅々まで描き込まれたものが多い。自身の「細かい性格」が影響していると語るが、作品の大きな魅力となっている。

 水彩画「The girl in the mirror13」(2020~21年)は、そんな藤井さんの作家性が垣間見える作品の一つ。同作は、鏡に着想を得た丸い枠内に個性豊かな女性が1人ずつ描かれた人物画12点を中心に構成される。鮮やかな配色が目を引くターバン、繊細で愛らしいレースなど、緻密に表現された衣服や装身具が印象的で、丸枠の縁取りも各人物の雰囲気に合わせた配色や模様で細かく描き込まれており、こだわりが光る。

 同作のように、藤井さんの描く人物画は衣服に意匠が凝らされたものも多い。これらは「縫製するわけじゃないし、自由だから」と思いのままにデザインすることがほとんどで、ファッション好きだというセンスが存分に生かされている。

「龍王」(2020年)©FFM2024

緻密さとデザイン力の高さは、新型コロナウイルス感染症の終息の願いを込めた水彩画「龍王」(2020年)にもうかがえる。中央に鎮座する「生物を司る神」の足元には、藤井さんが独自に想像した不思議な造形の生物の姿が隙間なく描き込まれている。こうした細やかな表現は、クリムトや伊藤若冲など自身が好きな画家の作風にインスピレーションを受け、描きながら想像を膨らませていくことが多いという。

 藤井さんのデザイナー的な感性は、本業のミュージシャン活動で培われてきた。デビュー以前からライブのポスターやツアーグッズのデザインを手がけるなど「絵以上にやってきた」と語るその経験が、現在のアート活動にも少なからず影響を及ぼしている。

 その美意識は、「楽しみの一つ」だという額装にも見て取れる。額縁はもちろん、作品と額縁の間の余白を埋める「マット」と呼ばれる台紙の有無まで、絵の雰囲気に合わせて自らコーディネートするこだわりぶりだ。素材も色もさまざまな額縁は、藤井さんにとっては重要な作品の一部なのだ。

 「よく見てもらうと細かい部分まで面白いと思う。一点一点素通りせずに興味を持って鑑賞できるのでは」という藤井さんの言葉の通り、それぞれの作品には見る人を魅了する引力が宿っている。その“細やかさ”は性格以上に、藤井さんの美意識を色濃く反映するものなのかもしれない。

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 「藤井フミヤ展 Fumiyart2024」(デーリー東北新聞社主催)は八戸市美術館で開催中。3月25日まで。

 
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