Free天鐘(3月26日)

世界地図の真ん中は、国によって違うようだ。日本版は太平洋と日本列島が位置する。慣れ親しんだ図だが、海外で買った地図プリントTシャツのほとんどは、イギリス中心だった▼ロンドン近郊グリニッジに「本初子午線」が定められたのは1884年のこと。本初とは経度の基線で、この地の時刻が世界の標準に採用されていく。世界の中心に置かれるようになった由縁でもある▼「パックス・ブリタニカ」。当時、海を越えて植民地を広げ繁栄を謳おう歌かしていたイギリスの標語だ。古代ローマ帝国の支配による安定「パックス・ロマーナ」になぞらえている。世界史の教科書にもイギリスの歴史が長く割かれていたのを思い出す▼過去に繁栄を享受し、覇権を手にした者ほど現状を冷静に分析できなくなるのだろうか。一体どうしたいのか。イギリスの欧州連合(EU)離脱を巡る迷走である▼国民投票まで実施しながら、英議会は大混乱。離脱日は延期されたが先行きは全く見えない。長い歴史を持つ国はどこかで算段を誤ってしまったのか。過去の“栄光”が足かせになっているのか▼繁栄の後には必ず衰退が、そして長い混迷が。しかもかつての繁栄には征服という負の側面もあった。時代は変わる。イギリスに限った話ではない。揺れる英国民には申し訳ないが、イギリスは今も生きた教材に映る。世界の中心でなくなっても存在は大きい。