Free時評(6月26日)

政府は2019年度の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)と成長戦略を閣議決定した。「骨太方針」は、今後の重要施策および次年度の予算の基本指針を示すものだ。ただ、7月に参院選を控えていることから、医療・介護などの社会保障費の見直しは喫緊の課題にもかかわらず、国民負担が絡むため先送りとした。国民の最大関心事の一つである高齢化対応の議論を避けたことは、骨太方針を骨抜きにするものだ。
 同方針では、消費税率を予定通りに10月から10%に引き上げることと、安定的な経済成長を目指すことを柱としている。財政再建策も消費税率引き上げ後の経済動向に左右されることもあり具体的言及を避けた。足元の景気は、米中貿易戦争の影響もあって陰りが見え始めているだけに、「下方リスクが顕在化する場合には、機動的なマクロ経済政策をちゅうちょなく実行する」と明記した。
 同方針等のポイントとして「70歳までの就業機会の確保」や「就職氷河期世代の正規雇用者を今後3年間で30万人増やす」ことを盛り込んだ。問題はいかに実効性を持たせるかだ。
 バブル崩壊で新卒での就職の機会を奪われた30代半ばから40代半ばの「就職氷河期世代」への抜本的な支援策は急務だ。同世代の非正規労働者は、本来ならば日本経済の中核となって、年金世代を支えているはずだ。不安定な雇用形態、低賃金といった経済的なこともそうだが、差別や引きこもりはじわじわと日本社会をむしばんでいる。
 バブル崩壊の被害者ともいえる非正規労働者はキャリア、スキルとも乏しい人が多い。思い切った支援を政府、企業に求めたい。企業経営者は、生産性の観点だけから採用を考えるのではなく、企業の社会的責任といった広い視野に立つべきだ。
 健康保険料や介護保険料など社会保障制度の全体的な見直しは、国民の関心が高いテーマにもかかわらず、「20年度の骨太方針でとりまとめる」と先送りとなった。
 折しも同方針発表前に、金融庁の「老後2千万円不足」報告書が話題となった。公的年金制度に対する誤解を招く内容だとして事実上撤回させられたが、老後不安は、高齢者だけでなく若い年代にも高まっている。
 参院選前だからといって賛否が分かれる議論を避けるのではなく、逆に選挙だからこそ超高齢化時代の国民負担の在り方をきちんと説明し、各世代の理解を得ることが長期政権に求められる課題といえよう。