Free時評(9月16日)

八戸市の根城や二戸市の九戸城など、北東北地方最大の大名・南部氏にゆかりがある青森、岩手両県の7城が、お城を訪れた証「御城印(ごじょういん)」の販売を7月に開始した。売れ行きは好調で、お目当ての城から近隣に足を延ばす人が増えているという。
 全国的に知名度が低い南部氏だが、東北屈指の規模の城館を有していたことなど、その特色が近年の研究で明らかになりつつあり、戦国ファンの間で注目を集めている。この機を捉え、地域や県境をまたいだ連携を強め、南部氏の歴史を広域観光に生かしてほしい。
 お城の探訪は、日本城郭協会により2006年に根城、弘前城、盛岡城が選定された「日本100名城」と、17年に九戸城と青森市の浪岡城が追加となった「続日本100名城」が火付け役となり、現在まで人気が続く。旅行会社が名城を回るツアーを企画し、テレビや雑誌でも特集。この数年は、城名や城主の家紋などがあしらわれた御城印の販売が各地で始まり、収集のために全国を回る人も多い。
 八戸市博物館は昨年秋から根城での御城印販売を計画し、周辺の市町村に連携を呼び掛けたところ、聖寿寺館(しょうじゅじたて)(南部町)、三戸城、九戸城、久慈城、種里城(鯵ケ沢町)、鍋倉城(遠野市)が参加。1枚300円で一斉に販売を始めた。来訪者の多い根城や九戸城から他の城にも足を延ばす人や女性グループが増えており、7城の御城印全てを集めて会員制交流サイト(SNS)に写真を載せているファンもいる。
 南部氏は南北朝時代初めまでに北奥羽地方へ入り、遠方への領地替えを経験せずに、500年以上の長きにわたってこの地に根を張った。家中の抗争に端を発した九戸一揆は、豊臣秀吉による天下統一の総仕上げとなる一戦で、よく小説や演劇の題材に取り上げられる。加えて、近年の発掘調査で南部氏の勢力の大きさをうかがわせる発見が相次ぎ、聖寿寺館では2階建ての建物やアイヌ居住の可能性も議論されている。中央の大名に負けない歴史的な魅力は十分にあるだろう。
 根城(遠野)南部氏の女当主・清心尼(せいしんに)を描いた直木賞作家・中島京子さんの小説「かたづの!」と、それを原作にした里中満智子さんの漫画も人気となり、歴史の専門書を扱う中央の出版社でも複数の南部氏関連書籍の刊行が予定されている。追い風を生かしたい。「南部氏」をキーワードにした広域連携を今回で終わらせず、第2、第3のアイデアを打ち出してほしい。