■家で眠った携帯から…
皆さんの家の中に、もう使わない携帯電話が眠っていないだろうか。長年使った愛着がある上に、メールのやりとりや電話帳、写真などのデータが残されており、なかなか捨てることができない人も多いはずだ。 試しに記者の家を探してみた。「ガラケー」が4台、スマートフォンが2台、タブレット端末が1台も見つかって驚いた。もっと探せばあるいは…。 こうした「小型家電」には実は豊富な金属が含まれており、近年「都市鉱山」の一つとして注目されている。家電や産業機器を鉱石に見立て、金属を回収する取り組みだ。 電話のほか、ノートパソコンやカメラ、ゲーム機、オーディオなどが小型家電に分類され、主に自治体が回収する(携帯電話は通信会社も)。これとは別に、テレビや洗濯機、冷蔵庫、エアコンの大型家電(家電4品目)は各メーカーがリサイクルしている。 資源が乏しい日本にとって、特に重要なのが貴金属やレアメタル(希少金属)。物質・材料研究機構(茨城県つくば市)の試算によると、国内の都市鉱山に眠る金の量は6800トンで、世界中に埋まっている天然資源の16%に達する。有効活用しない手はない。 同機構の原田幸明特命研究員は「家電だけでなく、工場の廃棄物など産業分野を含めて資源を確保する必要がある」と指摘する。 最近になって都市鉱山の活用を加速させそうなニュースが飛び込んできた。2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が、金銀銅メダルに小型家電の回収金属を使う方針を決めたのだ。 2019年6月に八戸市、岩手県一関市、秋田県大館市が共同提案したのをきっかけに検討を進めた結果、▽日本の技術を世界へ発信できる▽大会へ国民参加が進む▽五輪の遺産としてリサイクル意識が残る―と判断した。 具体的な制度設計はこれからで、既にある各自治体の回収システムとリンクさせるかどうかも焦点となる。八戸市の試算では2015年度に市内で回収した小型家電から作れるメダルは、金が約28個、銀が約4個、銅が約3624個になるという。 どうやら、家で眠ったままの携帯電話にお別れする時が来たようだ。データを消去して近所の公民館の回収ボックスへ入れるか、携帯販売店へ持ち込めば、金メダルに生まれ変わるかもしれない。 4年後は誰かの首にぶら下がり、里帰りするのを楽しみに…。 ▼都市鉱山から金メダル(下)に続く

