Free久慈のギンザケに熱視線 事業化へ養殖試験進む

久慈港に水揚げされた養殖ギンザケ。身が硬く刺身に向くという=7月
久慈港に水揚げされた養殖ギンザケ。身が硬く刺身に向くという=7月

久慈市でギンザケの海面養殖試験が進んでいる。2028年度に完成予定の湾口防波堤内で波が穏やかになることを見据えた3カ年計画で、最終年度の来季はいよいよ事業化が視野に入る。背景にはすしネタとしてサーモンの人気が高まっているのに加え、海水温が低い新たな漁場を求める水産業界の動きがある。主力の秋サケやスルメイカ、サバが不漁で地元漁業者が苦境にあえぐ中、ギンザケは救世主となるか―。北三陸の海に水産各社から熱視線が注がれている。
 久慈港で5日、ギンザケの今季最後の水揚げが行われた。7月上旬から計6回にわたり、約40トンを水揚げ。昨年11月に湾内に大型いけすを設置し、稚魚を10倍の約3キロまで成長させた。
 久慈市漁協が養殖事業を展開するニチモウマリカルチャー(本社福岡市)と連携して実施している。担当する市漁協営漁指導課の皀(さいかち)秀明係長は「8月に入ってからの水揚げはうちだけ」と説明。久慈はギンザケ養殖では北限となっており、水揚げ時期の遅さが最大の強みになるとみている。
 ギンザケ養殖に適した水温は8~20度。だが、国内トップ産地の宮城県では8月は20度を超えるため、水揚げは7月中旬に終わる。久慈は宮城よりも2、3度低い水温を生かし、品薄で魚価が上がる8月に集中的に出荷する狙いだ。
 久慈以外でも、岩手県内ではサーモン類の海面養殖が活発化している。宮古市では、地元漁協や日清丸紅飼料(東京)がトラウトサーモンを、大槌町では、民間主導で地元漁協や日本水産(東京)がギンザケを海面養殖し、今年初出荷した。いずれも地元と水産会社がタッグを組んだ格好だ。
 ニチモウマリカルチャーによると、サーモン類は日本だけでなく、アジア全体で消費が急増。ノルウェーやチリからの輸入量を増やすのは難しく、国内で増産せざるを得ないのは現状だが、近年、海水温が上昇。こうした背景から、販売期間を延ばせる北の海域が注目されている。
 戸川富喜・取締役石巻営業所長は「国内の競争は激しくなってきたが、それでも需要に供給が追いついていない」とし、ニーズはまだまだあると強調する。
 久慈市漁協は来季、稚魚の数を増やしていけすの密度を高め、120トンの水揚げを目指す。最後の水揚げはお盆時期に合わせるほか、事業化に向けて区画漁業権の取得も進める方針。