Free日本初の原子力船「むつ」を「ふね遺産」認定/日本船舶海洋工学会

原子力船「むつ」(日本原子力研究開発機構提供)
原子力船「むつ」(日本原子力研究開発機構提供)

日本船舶海洋工学会(東京)は31日、次世代に伝えるべき文化的遺産として、原子力船「むつ」を「ふね遺産」に認定したと発表した。日本初の原子力船として、多くの技術的知見をもたらしたことを評価した。
 同学会は学術的、技術的に価値のある船や関連設備を、ふね遺産として毎年認定している。4回目となる今年は、7月中旬に審査委員会を開き、むつなど8件を認定した。むつは通算30件目で、現存しない船としては、4件目となる。
 むつは1968年に起工し、69年進水、91年完工。95年に船内から原子炉室が撤去されるまで、原子炉特性の把握、放射線遮へい、解役方法、放射能汚染除去など、原子力船に関する多くの技術データを残した。74年には試験航海中に放射線漏れの事故を起こした。
 91年からは約1年間、計4回にわたる原子力動力による実験航海を実施。
 同学会は、地球2周以上に及ぶ約8万2千キロの総航続距離を、重さ約4・2キロのウランで航行したことや、出港から入港まで放射性廃液を船外に排出することなく航行できることを実証したことを功績に挙げた。
 95年に撤去された原子炉室などは、むつ市のむつ科学技術館に展示・保管されているほか、船体は再利用され、同市の関根浜港を母港とする海洋研究開発機構の海洋地球研究船「みらい」として活躍している。
 前身の日本原子力船開発事業団がむつの運航に関わった、日本原子力研究開発機構は「認定は光栄。むつの成果を活用した技術がいつか実用化され、地球温暖化の防止や低炭素社会の確立に貢献することを期待する」とコメントした。原子力船「むつ」(日本原子力研究開発機構提供)

 
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