Free【北奥羽の地名】十符ケ浦(とふがうら、野辺地町)/貴族に人気 和歌の歌枕

北奥羽の地名
北奥羽の地名

毎年夏、多くの人たちでにぎわう野辺地町の「十符ケ浦海水浴場」。その起源は、和歌の歌枕「十符の菅薦(すがごも)」にあるという。

 菅薦とは植物のスゲで編んだ携帯用の寝具あるいは、ござのこと。主に地面や床に敷いて使用した。十符とは編み目が10本並んだ状態を指す。

 十符の菅薦が登場する最も有名な和歌は「みちのくの十符の菅薦七符には君を寝させてわれ三符に寝む」。

 相手が就寝するスペースを少しでも広くしてあげようという、思いやりの気持ちがよく表れている恋の歌で、平安貴族から高い人気を集めた。

 十符の菅薦を歌枕にした歌は、勅撰和歌集に数首が収められた。そのため、地名だけでなく町を象徴する文物としてさまざまな場面で引用されている。

 旧野辺地小校歌の歌詞や、校章のデザインの中にスゲの意匠が見られる。また、現在も続く野辺地小の広報誌のタイトルが「わかすげ」。

 十符の菅薦の候補地は他にもあるが、野辺地の町の人たちは、町の誇りとして今も親しんでいる。

 
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