Free【藤井フミヤ展】藤井さんと日比野さんがトークイベント

ミュージシャンの藤井フミヤさん(左)と東京藝術大学長の日比野克彦さん
ミュージシャンの藤井フミヤさん(左)と東京藝術大学長の日比野克彦さん

八戸市美術館で開催中のミュージシャン藤井フミヤさんの画家としての活動を紹介する絵画展「藤井フミヤ展 Fumiyart2024」。初日の20日にはその開幕を記念して、藤井さんと東京藝術大学長の日比野克彦さんが出演するトークイベントが開かれた。藤井さんの画家としての制作活動や作品表現について語り合った内容を詳報する。

 日比野 上京する前から絵が好きだった?

 藤井 そうですね。もうちょっと勉強ができれば芸大を目指していたかもしれない。(芸大では)絵を描く技術を毎日勉強できるのがうらやましい。

 日比野 美大や芸大のいいところは、仲間がいること。答えが分からないものについて議論できる。

 藤井 確かに。特に現代アートは(仲間が)いないと不安になる。

 日比野 展覧会を見て、フミヤさんは「音楽の藤井フミヤ」と「美術の藤井フミヤ」を使い分けていると思った。

 藤井 比較的使い分けている。

 日比野 次のビジョンを提案するなら、音楽と美術の両方に共通する「ディス・イズ藤井フミヤ」みたいなものが絶対あると思う。額にはまった絵や新曲のリリースという既存のメディアじゃなく、フミヤさんならではの表現メディアとか発信の仕方みたいなものをきっとつくると思う。

 藤井 表現としては、出尽くしたと言えるほどにあらゆるものがある。その中でオリジナリティーを見つけるなら、どんなものがヒントになったりするのか。

 日比野 やりたいことがあって、そのために画材を選ぶとか、もっと言えばそれを作るぐらいのところまで到達すれば、自分の表現がプラスになっていく。売れることや評価を気にし過ぎるのはあまり良くない。

 藤井 AI(人工知能)が絵を描くような時代も来ている。

 日比野 でも、フミヤさんは2019年にアート活動を再開した時にアナログで描き始めた。ああいう絵は描きながらどんどん広がっていく感じ? 

 藤井 描きながら。その時に見た作家の作品にも結構影響を受ける。

 日比野 画材によっても“ノリ”が違う。この筆だからこの線が気持ちいいとか。あるじゃない? 

 藤井 いろんな画材を使うが、(手に)持った物でどうやったら面白いか考えるのが好き。(絵の着想源について)素材から考えていくこともあるが、画題から入る時もある。

 日比野 今、絵を描く時間とかミュージシャンとしての音楽の時間はどういうふうに分けている?

 藤井 絵を描くのは家にいる午前中。一番気を付けているのは、酔っぱらった時に描き足さないこと。その時は「俺、天才だ」って思うけど、翌日見ると「うわ、やっちゃった」ってことがあるから。冷静な時に描く。

 日比野 でも、酔っぱらった時にゼロから描くみたいなものも見てみたい。

 藤井 意外とコツコツまめに描くのが好きみたいで。細かい性格を大胆にするならどういう技法がいいのか考えている。もっと瞬間的に描きたい願望はある。

 日比野 描いている時は音楽を鳴らしたりする?

 藤井 職業柄、常に音楽に囲まれているせいか、無音の中で描くことが多い。独り言も言わない。トイレも行かず水も飲まず、気が付いたら何時間もたっている。画家って体に悪いけど、長生きしている人が多いのも確か。ストレスがないんだろうなって。

 日比野 自分の世界に没入できるスイッチを持っているからだろうね。ぜひ長生きしましょう。

 藤井 そう。手が動けば絵は描けるし。歌も歌えるところまでは歌いたい。

(展覧会はデーリー東北新聞社が主催。会期は3月25日まで)

 
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