Free【号外で振り返る2023】④藤井 初の全八冠/将棋(10月11日)

【号外】藤井 初の全八冠(10月11日)=PDF

10月11日、将棋の藤井聡太七冠が第71期王座戦5番勝負第4局で王座を奪取、タイトル全八冠を独占した。史上初の快挙に将棋ファンだけでなく、多くの人が驚いた。

 将棋と言えば、青森県内ではおいらせ町(旧百石町)が特に盛ん。故大山康晴15世名人(1923~92年)が、1970年代後半ごろから旧百石町を訪れ、熱心に子どもたちを指導したことをきっかけに“将棋の町”として知られるようになった。2023年は大山名人の生誕100周年の年であり、8月にはおいらせ町で記念行事も行われた。

 大山名人はタイトルが五、四、三冠時代に全冠制覇を達成。今回の藤井八冠と同じ「全冠達成者」でもある。将棋界の頂点を極めた藤井八冠。果たして次の一手は・・・。

【その時とそれから】

故大山名人たたえ企画続々 生誕100年、盛り上がる「将棋の町」(1月16日)

1988年8月、百石小にできた将棋道場に飾る額を贈る大山康晴名人(左)

今年(2023年)は、おいらせ町(旧百石町)に将棋文化を根付かせた故大山康晴十五世名人(1923~92年)の生誕100年に当たる。節目を記念して町教委などはワークショップや特別展示を実施し、「将棋の町・おいらせ」をPRする方針だ。町内では今でも大山が立ち上げに関わった子ども将棋教室が開かれていて、偉人の功績が息づいている。町教委の担当者は「特別展示を通して町の歴史を再認識する良い機会にしたい」と話す。

 プロ棋士として数々の成績を収めた大山は、1970年代後半から普及活動のために全国各地を訪問。日本将棋連盟名誉会員でアマ九段の中戸俊洋さん(80)=おいらせ町在住=が78年、「東北将棋強豪選抜大会」の審判に大山を招いたことで初めて旧百石町に足を運んだ。

 中戸さんよると、大山は83年以降、毎月のように町を訪問。子どもを中心に対局指導や講演を重ねた。岡山県倉敷市出身だが、いつしか町を「第二のふるさと」と口にするようになった。中戸さんは「町に将棋文化が根付いたのは間違いなく大山名人の努力のおかげ」と功績をたたえる。

大山将棋記念館で開かれている子ども将棋教室。子どもたちが熱心に腕を磨いている=2022年12月24日、おいらせ町

かつて大山が子どもたちに教えていた将棋教室は今も続く。参加者は毎年500~600人台で推移している。2021年度は617人だった。教室で40年以上指導に当たる小笠原一男さん(65)=おいらせ町在住=は「大山名人が来ていた頃よりは少なくなったが、子どもたちの将棋に対する熱意は今も昔も変わらない」と話す。

 9歳から15歳ごろまで、大山から対局指導を受けたという学校教員の竹ケ原雅幸さん(48)=十和田市在住=は「将棋の神様的な存在だが偉ぶることなく、気さくで誰に対しても優しかった。道具の磨き方など将棋以外のことも教わった」と思い出を振り返る。

 大山と中戸さんが中心となり、86年に第1回を開いた「全国将棋祭り」は町の一大イベントに成長。子どもを駒に見立てた「人間将棋」や女流プロ棋士の公式戦など豊富な企画が将棋ファンを楽しませてきた。

 だが、新型コロナウイルス流行後の20年度は中止に。21、22年度は人間将棋や公式戦誘致が取りやめとなり、大山の名を冠した大会やオンライン対局が開かれた。

 町教委は今年、コロナ以前のような形で将棋祭りを開催する方針で、大山にゆかりのある中戸さんやプロ棋士らによる対談などを計画。将棋の町を改めて発信するきっかけにしたい考えだ。

 町教委の田中繁幸さんは「大山名人のプロ棋士、将棋の普及活動家としての側面、人間性の三つにスポットを当てる企画にしたい」と意気込んでいる。

 
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