Free【揺れる水産都市・第3部「養殖待望論」】①地域特性

石巻魚市場で取引される養殖ギンザケ。漁船漁業が頭打ちの状況で、安定した漁獲量を維持して業界を救った=6月中旬
石巻魚市場で取引される養殖ギンザケ。漁船漁業が頭打ちの状況で、安定した漁獲量を維持して業界を救った=6月中旬

6月中旬、早朝の宮城・石巻魚市場。主に地元船が漁獲したサバやカツオが所狭しと並ぶ中、負けじと存在感を示していたのが養殖ギンザケだ。「去年は随分と助けられた」。魚市場の佐々木茂樹社長は、そう語りながら熱心に入札価格をメモした。

 宮城県内での養殖ギンザケの歴史は古い。1975年に始まったとされ、昭和から平成に至り、漁業の中核を担うほどになった。後に安価な海外産の台頭、東日本大震災の影響などで苦境に立たされたものの、漁船漁業が衰退する今、再び水産業界を支える。

 魚市場では2022年、開設以来初めて、主力のサバやイワシを抑えて取扱高1位(48億円)に。数量は5715トンで全体(10万3425トン)に占める割合は少ないが、1キロの平均単価が841円と高値だった。

 1カ月先まで水揚げスケジュールが決まっており、仲買人は動きを事前に把握できる。佐々木社長は「加工原料として前処理する仕事もあるし、地元と良い関係で取り扱いができている」と強調する。

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 ギンザケのような魚類、ノリやワカメなどの藻類、ホタテやカキといった貝類。養殖業と言っても扱う海産物は幅広く、海水面、内水面、陸上と飼育環境も異なる。

 水産庁によると、国内の養殖業生産量は1988年まで増加傾向にあったが、近年は後継者不足などを背景に減少。ただ、漁船漁業の生産量も減少しているため、全体に占める割合としては2割を維持する。

 世界では、藻類養殖や内水面養殖の生産量が過去20年で4倍に拡大。今後も成長する見通しだ。

 国内の漁船漁業が頭打ちとなっている現状において、養殖業に対する水産業界の期待は総じて高い。近年は大手企業の新規参入、地域名を冠した新ブランド養殖魚誕生のニュースを耳にすることが増えた。

 漁船漁業と並行し、比較的手間がかからない藻類や貝類の養殖に取り組むことで、所得向上を目指す漁業者の動きもある。

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 このような潮流にあって、漁船漁業で栄えた八戸港は水産都市として後れを取っている―との指摘がある。水産関係者によると、八戸地域で養殖業に取り組む動きは少なからずあったものの、目立った実績は見当たらない。

 「八戸の海は養殖には向かない」。ハマの常識として語り継がれる言葉だ。

 狭い湾や入り江がない。波のうねりが強い。水温の高低差が大きい。魚種が限られる。フェリーなどの航路を妨げることから、波が穏やかな防波堤内は漁業権を放棄している―。

 数々の理由が列挙される。陸上養殖に関しても、コスト負担が大きく、土地や水の確保が不可欠で、大量生産に不向きとされる。

 それでも、隆盛を極めた往事の漁獲量は見込めず、水産業全体が落ち込む中、「養殖待望論」が根強いのも事実だ。

 「八戸で養殖はできるのか」。浮かんでは消えた問いかけに、答えを出す時期が来ている。

 
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