Free(24)海外と青森のつながり 武藤一郎・日本銀行青森支店長

青森県の輸出入額(上)と、外国人延べ宿泊者数(青森県、1カ月当たり)
青森県の輸出入額(上)と、外国人延べ宿泊者数(青森県、1カ月当たり)

青森県に来てしばらくたつが、これまでの印象の一つとして、海外とのつながりが、青森県経済にプラスの影響を与えていると感じることが比較的少なかったように思う。

 例えば昨年後半には為替円安が進んだが、当県では円安が主として原材料コストの高騰を招き、輸出増加によるメリットは少なかった。これは、青森県では輸出産業が少なく、内需型産業が多いためである。実際、過去を見ても、輸出額が輸入額を下回る年がほとんどである(図1)。

 また、コロナ禍が続き、海外からの渡航者数が少なかったことも、プラスの影響を感じられない原因であった。特に昨年末頃までは、当地で外国人を見かけることがまれだった。円安は本来、インバウンド(訪日客)需要も喚起するはずだが、当県では外国人の来訪が全国よりも遅れ、その点でも恩恵が感じられなかった。

 とはいえ、詳細に見れば、当県経済が海外との結びつきによる恩恵を得ている部分はある。輸出でも、中身を見ると、リンゴなどの農産物については増加傾向にある。これらの増加には円安の効果だけでなく、これまで行ってきた海外マーケティングの成果で、当県の県産品への評価が高まったことも寄与している。

 また、インバウンド需要については、ここに来て本格的な回復の動きが見られる。特に本年入り後、外国人の宿泊者数は増加傾向にある(図2)。当方も桜の時期やGW期間中、県内各地に足を運んだが、昨年の比ではなく、外国人観光客を多数見かけた。インバウンド需要の回復は、サービス輸出の増大という形で、当県経済にメリットをもたらすだろう。

 ところで、より長い目で見た場合、青森県経済は今後どの程度、海外とのつながりを強めるべきだろうか。

 急速な人口減少が進む当県では、県民需要を伸ばすことが難しいため、県経済を維持していくうえで、拡大が期待できる海外の需要を取り込むことは必要だろう。その点で輸出やインバウンドへの依存度を高めることは自然な方向である。

 ただ、海外との関係は輸出やインバウンドのみにはとどまらない。例えば、人手不足が深刻化する状況下で、当県経済を支える人材を確保するために、外国人労働者を今後さらに活用していくか否かも重要な論点だ。また、これまでは事例が少ない海外企業との提携や企業誘致なども、県経済の活性化につながるメリットがあるのであれば、選択肢になるかもしれない。

 もちろん、これらを考えるうえでは、海外との結びつきの強まりが、最終的に青森県民の豊かさを高めることにつながるかという観点が何より重要だ。海外との関係を一概に強めることが県民のメリットになるとは限らない。

 ただ、青森県経済の中長期的ビジョンを描くうえで、海外との関係をどう考えるかは、県民として大切な論点であろう。経済の正常化が進み、人口減少という課題に再び直面する現在、海外との関係も含め、長い目で見た当県経済のあるべき姿について、議論が深まっていくことを期待したい。

 
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