Free米軍基地、原子力施設が偵察対象? 中国気球に住民動揺

2021年9月3日に八戸上空で目撃された白い球体
2021年9月3日に八戸上空で目撃された白い球体

米国で中国のものとされる偵察気球の撃墜が相次ぐ中、2019~21年9月にかけて八戸市などで確認された飛行体について、防衛省は、中国が飛行させた無人偵察用気球だと強く推定される―と発表した。北奥羽地方には八戸の自衛隊基地をはじめ、米軍三沢基地や原子力関連施設が集中立地。渦中の中国は否定するものの、安全保障やエネルギー政策上、重要な役割を担う青森県上空で情報を収集していた可能性は排除できない。「不気味」「しっかり対応を」―。住民には動揺が広がった。

 八戸で確認されたのは21年9月3日の早朝。中須賀海岸の上空だった。目撃した同市の自営業本城修宏さん(55)によると、肉眼では白い点にしか見えないほど高位置。カメラの望遠レンズでのぞくと、飛行体の下部に機材のようなものがぶら下がっているのが見えたという。

 「中国の偵察気球だったとは思わなかった」と振り返り、「自衛隊や米軍基地があるので、軍事利用されそうで怖い。有事にならないよう外交努力をしてほしい」と訴える。

 青森県内には、国防やエネルギーに関連する施設が数多く存在する。気球の目的は不明だが、それらが“偵察対象”だったと受け止める向きは多い。

 核燃料サイクル施設が立地する六ケ所村。住民の女性(75)は「何の情報を集めているのか分からず不気味」と眉をひそめる。「事業者は今後、気球の存在を気にしながら施設を運用しなければならなくなるのでは」とした上で、「国は(領空に入ってきた飛行体を)しっかり監視すべき」と求めた。

 米軍三沢基地は、問い合わせに「各基地ではコメントしていない。国防総省で一括対応している」とし、三沢防衛事務所も「本省の発表や防衛相の記者会見の内容以上のものはない」。安全保障に関わる案件のためか、十分な回答は得られなかった。

 ある原子力関連施設の担当者は「報道では承知している」とだけ語った。

 一方、防衛省は15日、領空侵犯した気球や無人機などに対する武器使用について、要件緩和を検討することを表明。警戒を強化する姿勢を鮮明にした。

 ただ、三沢市の男性(72)は、米国の撃墜が相次いだ後に見解を発表した国の情報収集能力や対応に疑問を投げかけ、「米軍基地がある街が他国から狙われる可能性はゼロではない。迅速に対応してほしい」と注文を付けた。

 
お気に入り登録