Free昭和の香りぷんぷん 「ルーレット式おみくじ器」に注目/唯一の製造元、岩手に

国内では北多摩製作所だけが製造・販売している「ルーレット式おみくじ器」
国内では北多摩製作所だけが製造・販売している「ルーレット式おみくじ器」

全国の飲食店などで見かける「ルーレット式おみくじ器」は国内で唯一、岩手県滝沢市で作られている。手がけるのは北多摩製作所(佐藤陽太郎代表)。世代を超えて愛されるアナログなおみくじ器は昭和レトロブームに乗って今、注目を集めている。

 金属加工業がメインの北多摩製作所は、副業として1983年ごろからこの商品の製造・販売を始めた。当時、本体上部が灰皿になっている他社のおみくじ器がある中、ルーレットを取り付けたオリジナルの商品を企画したという。

 十二星座別の硬貨投入口に100円玉を入れレバーを引くと、本体上部のルーレットが回り、中からおみくじが出てくる仕組み。

 単純だが、遊び心があるおみくじ器は全国に広まり、喫茶店やレストランのテーブル、カウンターに置かれて、来店客が注文の品を待つ間などに心弾む時間を過ごした。現在も老舗を中心に変わらず親しまれているほか、昭和の時代を感じさせる商品としてドラマの場面に登場することも。

 最近の昭和レトロブームから、現在の子どもたちがおみくじ器と出合う機会も生まれた。小学館の学習雑誌「小学一年生」は2022年11月号付録のペーパークラフトに採用した。

 担当した小学一年生編集部の磯辺菜々さん(29)によると、北多摩製作所の快諾を受け、試作を繰り返して、構想から約8カ月間をかけて実物のように遊べる楽しい付録を実現させた。

 「企画段階では、子どもが出合ったことのない物を付録にするのはどうかとの指摘もあったが、初めて見る子どもにもわくわくする気持ちが伝わると信じていた」と磯辺さん。読者からは、子どもの食いつきが良かったとの反応や「親にも懐かしく家族で遊んだ」との声が寄せられたという。

 昭和生まれのおみくじ器は平成、令和へと時代が変わっても、作り方が製造開始当初のまま。現在は、通常品(2色)を中心に生産・販売されているほか、15年度からは滝沢市のふるさと納税の返礼品にも採用されている。

 北多摩製作所おみくじ事業部営業部長の進藤卓弥さん(65)は「大事なのは作る商品が良い物かどうか。質の高い商品を作ることが今につながっている」と強調。「後継者も育成中。時代に合う商品、お客さまのニーズに応えられる商品を作り続ける」と意欲を語る。

 
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