Free(7)気候変動問題 武藤一郎・日本銀行青森支店長

経済規模対比でみたCO2排出量
経済規模対比でみたCO2排出量

気候変動は、11月開催のCOP27でも先進国・途上国間で議論されるなど地球規模の問題だが、青森県のような1次産業が重要な位置を占める地域にとっても重大な脅威である。当方も青森に来てまだ日が浅いが、気候変動が当地に深刻な影響を与えつつあると実感している。

 特に8月上旬に生じた豪雨は、津軽地方の一部を中心に交通・建物への被害のほか、収穫時期の迫っていた農作物に大きな被害を与えた。近年、このような自然災害が増加する背景には地球温暖化がある。青森でも気温は趨勢(すうせい)的に上昇しており、その傾向が続けば、来年以降も大型台風や線状降水帯が発生する懸念がある。

 また、突発的な水害の発生だけでなく、気候変動は当地に慢性的な影響をもたらしている。とりわけ、海水温上昇を通じた水産業の不振が深刻である。八戸などの漁港で恒常化しているサバやイカなどの不漁の原因には海水温上昇があるとされる。陸奥湾でも、夏場ピーク時の海水温が本年対比2度ほど上がると、ホタテが大量へい死する危険があると聞く。

 青森地方気象台・仙台管区気象台の将来予測によれば、気候変動問題への対応が取られたとしても、今世紀末の青森県の年平均気温は100年前と比べ約1・4度上昇する見込みだが、もし対応が取られなければ、気温の上昇幅は約4・7度に拡大する。

 また、後者の場合、東北地方で1時間に30ミリ以上の大雨が降る回数は、今世紀末には100年前の約2・5倍に増加するとされる。これらを踏まえると、二酸化炭素(CO2)排出抑制などの対応が取られることは、当地にとっても非常に重要である。

 もちろん、気候変動対応は当地だけでできるものではない。環境省の推計によれば、青森県のCO2排出量は日本全体の1・26%(2019年時点)である。したがって、たとえ当県単独でゼロカーボンを達成しても、全国の排出量は1%程度削減されるにすぎない。しかし、この事実をもって当県が気候変動への対応を怠ることは望ましくない。

 当県が行うべき取り組みを二つ挙げたい。第一に、当県では経済規模対比でみたCO2排出量は相対的に大きく、炭素効率を改善させる取り組みが求められる(図参照)。特に、当県は暖房需要や車社会を映じてエネルギー消費依存度が高く、家庭や運輸部門を中心に脱炭素を行う余地が大きい。長い目でみて炭素効率を改善させる必要がある。

 第二に、当県が受けている気候変動の影響について広く情報発信すべきである。気候変動はグローバルな問題だが、それによる被害には地域的な偏りがあり、1次産業が基幹産業である地域で影響が大きい。

 先進国と途上国の対立でみられるように、問題の原因と結果が地域内で完結しないのが気候変動問題の本質だが、問題が顕在化している地域からその実態をつまびらかに発信することで、地域レベルを超えた対応を促すことは重要である。

 気候変動の影響を受けやすい当県から問題意識を発信する意義は大きいだろう。

 
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