Free(3)流動人口データ 松田英嗣・あおもり創生パートナーズ取締役

12月1日、青森県民の悲願と言われた新幹線が八戸駅に乗り入れて20年を迎える。この節目にあたり、観光関係団体や八戸市などが記念関連事業実行委員会を組織し、さまざまな誘客事業を来年1月まで継続的に展開するという。タイミングよく、国が実施する観光需要喚起策である「全国旅行支援」もスタートするなど、関連事業には間違いなく追い風が吹いている。

 全国旅行支援とは、旅行代金の割引と旅先での買い物や飲食に使えるクーポン券を併せ1人1泊あたり最大1万1千円を上限に補助するものであり、青森県には66万人泊分が割り振られている。旅行を控えていた多くの人々にとっては非常に魅力的な補助内容であることはもちろん、地域の観光関連事業者にとってもコロナ禍で失った需要を取り戻す大きなチャンスであることは確かだ。

 そこで、「V―RESAS」の「流動人口データ」を使い、現段階での全国旅行支援の県内地域別効果を見える化してみたい。

 V―RESASとは、内閣府がインターネット上で公開する地域経済分析システムであり、最大の特徴はデータの精緻性、正確性よりもむしろ速報性に重きを置いた点にある。その速報性ゆえに、事業者や自治体にとっては、迅速に足元の状況を把握することが可能になり、早急に次の一手を講じることが可能になる。

 今回取り上げる流動人口データは、携帯電話のGPSデータをもとに県内各地の人出の増減状況を居住地別、時間帯別に、翌週には確認できることから、全国旅行支援のスタート時点の状況などを探るには、うってつけの道具になる。

 さて、県内における地域別の効果であるが、全国旅行支援がスタートした10月第2週と第3週の両週連続して県外からの人流がコロナ禍前に比べ増加しているのは、県内主要駅では八戸駅と本八戸駅のみである。

 このことから、県内で最も全国旅行支援の効果を取り込んでいるのは八戸地域と言える。この要因が、十和田湖、奥入瀬の紅葉シーズンに特有の一時的現象なのか、ビジネス客の多さによるものなのか、東北新幹線八戸駅開業20周年に向けたPR効果によるものなのか、このデータから読み解くことはできないが、少なくとも八戸市が青森県への入口や出口として選ばれていることは確かだ。

 近年、青森県の人口は毎年1万5千人程度減り続けている。また、県民1人あたりの年間消費支出額が100万円強であることを勘案すると、年間150億円程度の消費が県内から消失していることになる。その消失する消費額を補う効果を期待されているのが、県外や海外からの観光客だ。

 大事なことは、八戸から青森県入りした観光客が県南地域の魅力を満喫してもらうのはもちろんのことだが、同時に県南地域のみならず下北地域や津軽地域にまで足を伸ばしたくなる仕掛けを多くつくることだ。そして、8年後には北の大都市・札幌と新幹線で結ばれることを見据えた準備をすることだろう。

 毎年失われる消費額の大きさを考えるとき、期待の観光消費額が県内にあまねく行き渡る方策を本気で考えなければならない。

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