Free【北奥羽の地名】八太郎(八戸市)/馬淵川を意味する太郎

北奥羽の地名
北奥羽の地名

【八太郎=はったろう】

 八戸市の八太郎ケ丘公園から見下ろした八太郎地区は、工業地帯や住宅地の景色が広がる。公園を散歩していた近所の人々は「この辺りはここ数十年で、全く景色が変わった」と口をそろえる。公園のある高台には蓮沼神社がある。

 その名が示す通り、この地区は「八太郎沼(蓮沼)」と呼ばれる沼地が大半だったが、埋め立てによりみるみる姿を変えていった。地名の起源には、馬淵川の存在が大きい。『下長の歴史』(著・田名部清一、三浦忠司)によると、八太郎は「端太郎(はしのたろう)」が由来だという。「太郎」とは、大河である馬淵川のこと。馬淵川の最下流に位置した端の地区という意味だ。

 八太郎沼には、十和田湖の「八ノ太郎の出生伝説」が残る。大蛇になった八ノ太郎は、十和田湖で南祖坊と戦い、敗れたとされる。その八ノ太郎は馬淵川だ、という説も同書で紹介されている。

 川の河口に位置する八太郎地区は、洪水にしばしば見舞われてきた。氾濫を繰り返す大蛇を鎮めようと苦労した住民と、治水の歴史の深さも物語っている。

※ネット連載

 
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