Free愛された“母の味” 66年の歴史に幕 南部町「なかつぼストア」閉店

元従業員の川守田久美子さん(左)から花束を受け取り、笑顔を見せる中坪啓子さん(写真上)66年の歴史に幕を下ろした、南部町の老舗スーパー「なかつぼストア」
元従業員の川守田久美子さん(左)から花束を受け取り、笑顔を見せる中坪啓子さん(写真上)66年の歴史に幕を下ろした、南部町の老舗スーパー「なかつぼストア」

南部町平虚空蔵の老舗スーパー「なかつぼストア」が3月末で閉店し、66年の歴史に幕を下ろした。豊富な品ぞろえや手作り総菜が好評を博し、地域の百貨店として親しまれた。営業最終日には常連客や元従業員が来店し、別れを惜しんだ。

 同店を運営する有限会社「中坪百貨店」は、現店舗の場所で商店を営んでいた故中坪専助さんが1956年に創業し、長男紀雄さんが受け継いだ。2016年に紀雄さんが亡くなってからは、妻の啓子さん(76)が社長を務めてきた。

 同店の品ぞろえは食料品や総菜に加え、日用品に靴、鍵や練炭まで豊富にそろい、住民に喜ばれたという。啓子さんや従業員は、「専助さんはお客さんに何かの品物があるか聞かれたとき、『ない』と言いたくなかったみたい」と振り返る。

 99年に現店舗が完成。従業員は主に近くに住む主婦で、総菜コーナーに並ぶ煮卵や肉じゃが、みそおにぎりなどは手作りの“母の味”だった。

 状況が一変したのが、20年に始まった新型コロナウイルス禍だ。住民が外出する機会が減り、地域のイベントや集会もなくなった。啓子さんは「売り上げは減少し、コロナ禍の終息も見通せないことから、閉店を決めた」と話す。

 3月中旬から閉店セールを実施。最終日の31日は多くの買い物客が訪れ、従業員とあいさつを交わした。

 同町の農業川守田久美子さん(62)は元従業員で、高校時代にアルバイトとして働いたり、農閑期に事務作業を手伝ったりしていた。臨時で閉店セールを手伝い、最終日には啓子さんにサプライズで花を贈った。

 リンゴ農家の川守田さんは「なかつぼストアで働く中で人との接し方を教えてもらった。ホームステイで人を受け入れる際に、その経験が生きている」と感謝する。

 啓子さんは「いろいろな人から『閉店は寂しい』という声を聞き、こちらも寂しくなった。今までお世話になった人に感謝したい」と静かに笑った。

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