Free寂聴さん秘書の瀬尾さん講演 天台寺で9年ぶりに春の例大祭

生前の瀬戸内寂聴さんのエピソードを語る瀬尾まなほさん(左)
生前の瀬戸内寂聴さんのエピソードを語る瀬尾まなほさん(左)

二戸市浄法寺町の名刹・天台寺で5日、春の例大祭が9年ぶりに開かれた。名誉住職の故瀬戸内寂聴さんの晩年を支えた秘書の瀬尾まなほさんが講演し、生前のエピソードを交えながら、生き方から学んだことなどを伝えた。

 寺は、建立以来約360年ぶりに実施した本堂と仁王門の保存修復工事により、2015年から春の例大祭を休止。工事を終えた後も新型コロナウイルス禍で断念しており、今年は行動制限がない形での開催が久しぶりに実現した。

 瀬尾さんは大学を卒業した23歳の時、京都にある寂聴さんの住まい「寂庵」に就職。60歳以上も年の離れた寂聴さんが、同じ目線で愛情を持って接してくれたことを紹介した。

 文筆など、さまざまなことへの挑戦を勧められたが、瀬尾さんは自信がなく「私なんか無理」と答える場面があった。すると、いつも優しかった寂聴さんから「自分を粗末にする人間は、寂庵にはいらない」と叱られたという。

 初めて言われた厳しい言葉だったが「私のことを思い、いつも背中を押してくれたのがうれしかった」と振り返った。

 作家としての寂聴さんについては、「大ベテランなのに立場に甘んじず、最後まで情熱的に仕事していた」と印象を語り、「年を取っても向上心を持ち、好きなことを続けるのが生きる喜びだった」と強調した。

 二戸大作太鼓や伝統の天台寺舞楽、駒ケ嶺新山神楽の奉納、みこし渡御なども行われた。

 また、寺所有の歴史資料で岩手県有形文化財に指定された「紙本墨書 天台寺本堂再興勧進帳」を、7日まで境内の「桂泉蔵」で一般公開。多くの来場者の注目を集めている。

 一戸町から訪れた小野寺邦夫さん(77)、多美子さん(71)夫妻は、「寂聴さんがお元気だった頃は、例大祭での法話を毎年楽しみに聞きに来ていた。久しぶりに参加し、当時を懐かしく思った」としみじみ。

 菅野宏紹住職は「9年ぶりに復活した例大祭が好天に恵まれ、にぎわってうれしい」と喜んでいた。

 
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