Free【ツイセキ!あなたの疑問】階上の震度なぜ大きい?

階上町役場の敷地内に設置されている震度計=4月中旬、同町道仏
階上町役場の敷地内に設置されている震度計=4月中旬、同町道仏

「地震大国」と呼ばれる日本。近年は各地で大規模地震による被害が相次ぎ、北奥羽地方でも東日本大震災以降、余震とみられる地震が頻発する。そんな中、階上町民から「地震の規模と比べ、町内の震度は大きすぎないか」との声が寄せられた。震度計に何か異常があるのか、それとも揺れやすい場所なのか―。

 ■町民の関心事
 5月1日に発生した宮城県沖の地震でも、震度4だった八戸市や久慈市に対し、階上町はそれを上回る震度5弱を観測した。

 青森県の最東端で岩手県境に位置する階上町は、沿岸部は太平洋に面し、内陸部には階上岳がそびえる。震度計は内陸部にある道仏地区の町役場敷地内に設置されている。

 「町民から『おかしいのでは』『沿岸部はそんなに揺れてない』と言われる」と話すのは、同町総務課行政防災グループの野沢一臣主査。“震度問題”は町民の関心事のようだ。

 青森県が設置する震度計は、当初は町役場東側の庁舎近くにあったが、震災直前の2011年1月に同西側の現在地に移設。「震度が大きいのでは―との指摘は移設前からあった。建物や道路の影響を考慮し、移設したらしい」と説明する。だが、同様の指摘は続き、疑念は払拭(ふっしょく)されなかった。

 ■震度計は問題なし
 震度計は各市町村に設置され、基本的に市役所や町村役場がある場所が観測地点となっている。青森地方気象台の毛利光志主任技術専門官は「階上の震度は周辺に比べて問題ない」と回答。「震度計は町役場敷地内で100メートルも移動してない。2年ごとに点検し、適切に運用している」と計器の故障を否定する。

 観測が正常に行われている状況を裏付ける記録もある。19年12月19日に発生した地震の際、階上町は震度5弱を観測。近くの道の駅はしかみでは、揺れで商品棚の酒瓶が相当数倒れた。

 気象庁の震度階級関連解説表によると、震度5弱の定義は「電灯などのつり下げ物は激しく揺れ、棚の食器類、書棚の本が落ちることがある」とされ、相応の揺れ方だったようだ。

 ■軟質な火山灰層
 それではなぜほかの地点よりも震度が大きく出るのか。地震工学が専門の弘前大大学院理工学研究科の片岡俊一教授は「役場周辺は火山灰層が13メートルほど堆積。下が硬く、上が軟らかいため、地震のエネルギーが下から供給され、揺れが大きい。震度の大小は地盤が影響している」と分析する。

 片岡教授の研究チームは19年8月4日~9月25日、硬質な地盤の上に軟質な火山灰層が堆積する内陸部の道仏地区と、硬質な地盤がある沿岸部の大蛇地区の震度比較を実施。期間中に16回の地震を観測し、いずれも道仏地区の数値が大きく、平均0・6の差があることが明らかになった。

 「火山灰層が広がる三八地域の内陸部は揺れやすい。体感ではなく、データではっきりした」と片岡教授。地震の被害を最小限に食い止めるため、日頃の備えの重要性を訴えている。

 
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