Free(14)生産活動 佐藤雅裕・青森財務事務所長

業種別の製造品出荷額等(構成比)
業種別の製造品出荷額等(構成比)

昨今の物価上昇は、普段の買い物でも実感することが多くなり、私たちの消費行動にもさまざまな影響を与えている。このような個人消費の動きは、経済動向を知る上で主要な要素であり、日常生活の一部であることから、ある程度イメージがしやすいだろう。

 一方で生産活動は、日常生活でその現場を目にする機会が少ないため、実際にどのようなことが起きているかイメージしにくいのではないか。しかしながら、生産活動の現場となる製造業は、国内総生産の業種別割合で約20%を占め、農林水産業のイメージが強い青森県でも県内総生産の約15%と、生産活動は経済動向を知る上で欠かせない要素である。

 県内の製造業を俯瞰(ふかん)すると、さまざまな特色が見えてくる。2019年の製造品出荷額等は1兆7271億円で全国比0・5%の規模。製造品出荷額等の業種別割合は、上位から順に食料品(21・9%)、非鉄金属(15・9%)、電子部品・デバイス(14・6%)などとなっており、輸送用機械が最上位で20%以上を占める全国の構成割合とは大きく異なる。

 ご存じの方は少ないかもしれないが、出荷額で全国上位の品目もあり、コネクタ(1位)、さば缶詰(1位)、小型モーター(2位)、ブロイラー加工品(3位)など多岐にわたる。

 だが、ここに来て県内の製造業も、全国と同様に不透明な経済情勢の影響を大きく受けている。製造業者へのヒアリングでは原油・原材料価格の高騰、半導体不足の影響などを受け、「減産を余儀なくされた」「コスト増となっても価格転嫁ができなかった」などの声が多数聞かれた。

 青森財務事務所が1月31日に発表した県内経済情勢報告では、生産活動について「弱含んでいる」として2期連続の下方修正をした。判断材料の一つとして鉱工業生産指数を用いているが、これは、一月当たりの生産量を基準年(15年)=100として指数化したものである。

 今回発表した3カ月(22年8~10月)平均の指数(原指数)を見ると、青森県は92・7で、前年同期の102・1から9・2%減となった。特に県内製造業の構成割合が高い電子部品・デバイスはマイナス22・3%と大きく減少している。

 電子部品・デバイスは、モバイル関連向けで、中国向けの生産量が減少しているが、これは新型コロナウイルス禍における中国経済の混乱・減速によるところが大きい。全国でも同様に減少しているものの、構成割合が高い青森県においては、全体の指数により大きく影響したと思われる。

 また、構成割合トップの食料品は0・3%の増であった。ただし、製造業者へのヒアリングでは、水産加工品の原材料であるイカ・サバの記録的な不漁や、ホタテ稚貝の大幅減少の影響を不安視する声が聞かれているほか、県内で発生した鳥インフルエンザの影響も懸念されており、青森県特有の不安材料がある。

 今後、製造業を取り巻く不安材料が解消され、弱含んでいる生産活動が持ち直していくことを期待したいが、全国と比べ食料品や電子部品・デバイスの構成比が高い青森県では、農林水産業や中国経済の影響をより強く受け、持ち直しの動きが鈍る恐れもある。今後これらの事象がどのように推移していくか注視していきたい。

 
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