Free【猿楽の旅音日記】⑯組曲 奥南部漆物語 五章~苗畑~

漆の苗木を育てている苗畑。丁寧に草を取り、管理している(楽曲のMVより)
漆の苗木を育てている苗畑。丁寧に草を取り、管理している(楽曲のMVより)

二戸市地域おこし協力隊の猿楽さんは、市内の風景や文化を音楽で表現する「旅音プロジェクト」を進めている。音楽家の感性で捉えた二戸の印象を、曲のイメージと共に紹介する。

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 いよいよ奥南部漆物語をテーマにした組曲も最終章へ。前章まで、安比川流域の漆産業に関わる人々の姿を音楽とともに伝えてきたが、最後の楽曲は漆の苗木を育てる苗畑(なえはた)で作った。

 二戸市浄法寺町にある苗畑では現在、苗木を効率的に育てようと、さまざまな研究に取り組んでいる。地元の浄安森林組合の関係者が異なる環境条件で育て、雑草取りをしたり保護したりしながら、どのように成長していくかを観察する。

 この作業は一見簡単そうに見えて、大変なことも多いと思う。小さな変化を見逃さないように注意深く記録し、生育具合を比較してより良い管理方法を見付け、漆産業を支える原木を増やすことにつなげていく。

 楽曲は、この苗畑で育った苗木がやがて山に植え替えられ、未来に向けて大きく成長していくイメージで作った。大地に根を張り、力強く伸びる姿を思い浮かべながら聞いてほしい。

 組曲の文章を書き終えるに当たり、安比川流域で漆に向き合う人々が作り出す漆器の魅力について、改めて触れてみたい。

 漆器の値段は高いと言われがちだが、毎日使うことを考えると、僕は決してそうは思わない。1本の木から、わずかの量しか採れない貴重な漆。それを塗り重ねた品質の良い漆器を長く使っていくことは、毎日の食卓を彩り、人生を豊かなものにするに違いない。

 浄法寺の滴生舎(てきせいしゃ)や、岩手県八幡平市の安比塗漆器工房にも、普段使いできる漆器が多く販売されている。自分の生活スタイルに合った物を、手に取って探してみてはいかがだろう。(猿楽)

 ※毎月第2、第4火曜掲載。タイトル曲などのミュージックビデオ(MV)は、猿楽さんのサイト「にのへの旅音」で順次公開する。

 
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