Free(4)オンリーワン企業 齋藤成明・東京商工リサーチ八戸支店長

ニッコームの製造現場。失敗を恐れずに新たな技術開発に取り組むなど若々しい社風が活力となっている
ニッコームの製造現場。失敗を恐れずに新たな技術開発に取り組むなど若々しい社風が活力となっている

東京商工リサーチは調査を通じ、日々多くの企業の情報をデータとして蓄積している。

 国税庁が発表している税務統計によると、青森県内に所在する企業数は2万1千社超に上る。その中には優れた製品・サービスを提供したり、独自の技術を保有したりすることで、県内経済の原動力となっている企業も存在している。

 産業用抵抗器の設計・製造を手がけるニッコーム(三沢市、山道卓也社長)は、確固たる基盤を築き上げている。1966年設立で日本国内では同社のみが製造する製品を有したオンリーワン企業である。

 顧客の要望に応じて製品ごとにオーダーメードで製造している。これらは機械による大量生産に向かない製品で、人の技能による点が大きいため、国内ではライバル企業の参入が難しく、かつて存在した同業者も撤退して同社だけが残った。産業用抵抗器の国内シェアは100%。顧客は国内のみならず、世界各地に存在し、グローバルな営業を行っている企業でもある。

 抵抗器は「エネルギーを自在に制御し、電気がある限り存在する部品」(清水目浩司取締役技術品証部長)であり、同社製品は産業ロボットや電源装置、発電設備といった産業用途で利用され、身近なところでは新幹線や電気自動車(EV)の一部などにも導入されているという。

 電子機器では熱対策が問題となるが、同社製品は「放熱性への技術に特長があり、海外のライバル企業よりも性能的に優れる」(同)ものとなっている。

 日本ではオンリーワン企業であるが、海外には10社程のライバル企業が存在し、世界市場を舞台にした競争を展開している。

 急速なEVの普及などを背景として市場拡大の余地を残しており、若手社員の考えを設計に反映することで小型化・軽量化を行い、さらなる性能向上を図った新製品の開発も進めていく考えだ。

 また、同社は女性が活躍する企業でもある。従業員70名のうち、8割弱を女性が占め、長年勤務している従業員も多い。「ストレスなく働けるよう職場の雰囲気作りに力を入れている」(中澤智代取締役製造部長)ことで、安定した品質維持にもつながっている。

 半世紀を超える業歴を背景に、蓄積された技術を有する老舗企業である一方で、失敗を恐れずに新たな技術開発に取り組むなど若々しい社風を備えている。これが若手社員や女性の活躍に結びつくことで活力の背景となっている。

 オンリーワンという立場にとどまらない、同社のさらなる発展が期待される。

 
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