Free【猿楽の旅音日記】⑩組曲天台寺 終章~天台~

天台寺の参道。木々が色づく季節に歩くのも味わい深い(楽曲のMVより)
天台寺の参道。木々が色づく季節に歩くのも味わい深い(楽曲のMVより)

僕が二戸に移住した2020年は、天台寺が約360年ぶりの大改修を終えた年でもあった。二戸に来ることになった時にそのことを知り、少なからず運命的なタイミングを感じた。

 この寺は決して大きくも派手でもない。ただ、静かで美しいたたずまいを眺めるうちに、どこかこの地域の人たちのつつましく実直な生き方と重なるところがある、と思うようになった。

 冬の寒い日にも寺を訪れながら、組曲を作った。雪が降る中、温かいコーヒーとクッキーを振る舞ってくれた天台寺保存会の皆さん。帰り際に、「ここで温まっていきなさい」と声をかけてくれた浄法寺歴史民俗資料館の人たち。親切なおもてなしを受けたことは、僕の中の良い思い出だ。

 ここまでの組曲の各章で、寺を舞台に自由にイメージを膨らませてきた。最終章「天台」は、二戸市浄法寺町の四季折々の美しさと寺の景観を合わせて、一つの風景を描くようなイメージで曲を仕上げてみた。

 春の新緑、夏のアジサイの彩り、秋の紅葉、冬の降り積もる雪。天台寺とこの街の風景は僕の心を時に楽しませ、時に癒やし、数々の感動を与えてくれた。これらに感謝しながら作り上げた「天台」。ゆったりとしたテンポで、悠久の時の流れを穏やかに感じる終章にふさわしい曲となった。

 生きていると、さまざまな悩みやつらさを感じることもある。そんな時はこの寺に来て手を合わせ、静かに自分と向き合ってみてほしい。心の落ち着きを取り戻し、新しい自分に生まれ変わった気持ちで、この曲を聴いていただきたい。(猿楽)

 ※タイトル曲などのミュージックビデオ(MV)は、猿楽さんのサイト「にのへの旅音」で順次公開する。

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