Free【あの日の天鐘(完)震災7日目】2011年3月17日

本紙1面のコラム「天鐘」は東日本大震災をどのように伝えたか。震災7日目3月17日の朝刊より。

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 想定外という言葉をやたらと耳にする。想定外と言えば、今回の大震災そのものが想定外だ。気象庁は「三陸沖でこれほどの地震が起こるとは想定していなかった」と会見した▼さらに、緊急地震速報は、最大震度5弱以上を予測する場合、自動で発表されるが、誤報が相次いでいる。広範囲で地震が頻発すること自体が想定外で、直ちに改善できないという▼宮城県南三陸町は毎年、避難訓練をしてきたが、想定した津波は5・5メートル。今回は高さ約11メートルの防災センターを超えた。一命を取り留めた町長は会見で「それだけの規模しか想定できなかった」と話した▼日本を危機に陥らせているのが東京電力福島第1原発だ。「想定を超える」との社長発言に非難の声が上がっている。緊急炉心冷却装置の非常用発電機は5メートルの高波に耐えるだけの設計だったそうだ▼今、世界中の人が固(かた)唾(ず)をのんで福島原発の状況を見守っている。決死の覚悟で注水を続ける作業員には頭が下がる。最悪の事態を何とか回避できるよう祈るばかりだ。支援している自衛隊も原発施設の安定化は任務の想定外だという▼今回の大震災を機に、世界各国では原発計画凍結の動きも出てきた。青森県には東通原発があり、大間原発の建設も進む。非常用発電機の位置や、使用済み核燃料の冷却は大丈夫か。電力会社は積極的に情報を公開し、県民の不安解消に努めるべきだ。そういう情報公開まで想定外とは言えまい。

 
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