

昨夏の「令和の米騒動」以降、コメを巡る情勢は目まぐるしく変化している。特に高止まりが続く米価について消費者の関心は高い。デーリー東北新聞社は、買い求めやすい「コメ5キロ」に着目し、アンケートを実施。店頭で異例の水準となっている米価を消費者と生産者はどう受け止めているのか。アンケート結果を補足するため、コメ流通の過程を5キロ換算の価格に統一して見比べてみる。
消費者、生産者双方が納得のいくコメ価格、いわゆる適正価格は、どの程度が妥当なのか。アンケートから読み解く。
2025年産は、当初想定より猛暑や水不足の影響が少なく、昨年のような在庫不足にはなっていない。一方、激しい集荷競争を背景に価格は高騰。消費者の購入控えから新米の動きは鈍い。
アンケートによると、消費者が適正だと思うコメ5キロの価格(税込み)は「3000~3500円未満」が34.6%とトップ。理由は「主食だから安ければ安い方がいいが、農家のことを考えると、この値段」といった意見が多かった。価格高騰以前は、5キロ2000円前後で販売されていたことを踏まえると、現在の米価上昇に対して消費者の一定の理解が進んでいることがうかがえる。
次いで「2500~3000円未満」が26.9%。3番目に多かったのは「高くなる前はこのくらいの値段だった」という理由から「2000~2500円未満」で21.2%。以前の価格帯を求める回答も目立った。
「3500~4000円未満」は13.5%。「現在の価格に慣れてきたことと、主食とはいえ、今までが安かったのではないか」と農家に理解を示す意見があった。
このほか「高いと買えない」「家計が苦しいので少しでも安くなってほしい」といった切実な声も寄せられた。
一方、生産者は「3500~4000円未満」が50.0%を占め、消費者が考える適正価格より少なくとも500円以上高かった。次に多かったのが「3000~3500円未満」で32.1%、「4000~4500円未満」は10.7%だった。
「生産にかかるコストを考慮すると3000~3500円未満」「出荷する側からすると、3500~4000円未満がちょうどいい」「今まで赤字でやってきた。農家がもうけられる仕組みが必要」など、長期的に生産が継続できる体制づくりを求める声が多かった。

コメの流通には多くの業者が関わり、流通段階を経るごとに経費や利益が上乗せされる。
代表的なルートとして、農家は農協などの集荷団体に出荷する。ここで農協が農家に仮払いする生産者概算金(60キロ、1等米)は、農家収入の目安に。2025年の青森県産「まっしぐら」「はれわたり」は、いずれも3万円まで跳ね上がり、過去最高となった。
この時点で、農家の収入は5キロ換算2500円。参考程度に24年産のコスト(1317円)を差し引くと、農家のもうけは5キロ当たり約1200円になる。
集荷団体から出荷されたコメは卸売業者から小売りや外食産業へ流通する。この間、コメの保管料や精米費、輸送費、人件費、資材費用などさまざまコストがかかり、最終的に店頭価格に反映される。
今年の県産新米の店頭価格は12月19日時点で、5キロ約4600円。農家段階で5キロ2500円のコメが、店頭に並ぶ際は約1.8倍になっている計算になる。
一方で、販売ルートは農家が卸売業者と直接取引したり、インターネットなどを介して消費者へ販売したりするケースも近年増え、販路は多様化している。

米価上昇以降、コメを食べる頻度が変わったかを消費者に尋ねたところ、「変わらない」が71.2%、「減った」が28.8%で、3割近くが米価上昇でコメを食べる回数を減らしていることが分かった。コメの代替は麺類が6割、パンが4割だった。
今後の摂取頻度については「変わらない」が73.1%、「減らす」が26.9%。「5キロ5千円程度だと昼は麺類に置き換わるかも」といった回答や、「消費者、生産者両方が納得できる米価に早くなってほしい」と望む声が見られた。
2025年産の新米発売以降に購入した銘柄(複数回答可)は、「まっしぐら」「はれわたり」「青天の霹靂」など青森県産米が最も多かった。店頭に多く並んでいるのに加えて、「県内産が安心」との声もあった。
このほか、他県産銘柄米、ブレンド米などを購入する人も見られた。購入する際に重視するポイントは、多い順から「価格の安さ」「おいしさ」「地元産」となった。
本紙が独自調査した八戸市内6店舗の米価によると、14~19日の新米5キロの平均価格(税込み)は、まっしぐらが4648円、はれわたりが4662円だった。新米発売直後の10月5~10日はまっしぐらが4910円、はれわたりが4793円で、価格は下がり基調にある。
今年は収穫量が前年より多く、コメの取引関係者の間では今後値下がりするとの見方が強まっており、今後の価格動向が注目される。

農協などの集荷団体や卸業者のコメ買い取り額について、どの程度が妥当かを生産者に尋ねたところ、1俵(60キロ)当たり「2万~2万5000円未満」と「2万5000~3万円未満」の回答で7割以上を占めた。今年、農協が農家に仮払いする生産者概算金(60キロ、1等米)は、まっしぐら、はれわたりとも過去最高の3万円。農家の大半が、概算金について想定以上の高水準と受け止めているようだ。
妥当な価格帯は「2万~2万5000円未満」が46.4%でトップとなり、多くは「農業資材や燃料費が高騰する中で利益を出せる金額」と回答。「高い方がいいが、それでは消費者がついてこない」と需給バランスを考慮した意見もあった。
次いで多かったのは「2万5000~3万円未満」が25%、「3万~3万5000円未満」が14.3%と続いた。コメ60キロ当たりの生産コストは、1万~1万5000円以内と答える人が多かった。
十和田市で2法人を経営する竹ケ原直大さん(46)はロシアのウクライナ侵攻以降、肥料などの価格が上昇している現状を踏まえ「数年前と比べてコストは1.3倍くらい増えた。概算金は2万~2万5000円が妥当だと思う」と話す。
概算金は昨年から急上昇したものの、過去10年間を振り返ると、採算ラインを割った年もあり、再び価格が暴落することを不安視する声も多い。
制度変更などがあり単純比較できないが、14年産まっしぐらは過剰在庫で過去最低の7300円まで下落。その後はおおむね1万~1万2000円台で推移したが、コロナ禍の21年は8000円と再び暴落した。
在庫不足と集荷競争を背景に「令和の米騒動」で混乱した24年は一転し、当初額1万5000円が2万2000円まで引き上げられた。25年は3万円と前例のない金額まで上昇している。
三戸町の男性(60)は「今年は良かったが、10年分の損を戻してもらったくらいの感覚」と回答。東北町の男性(65)は「米価が安い時は騒がれず、消費もあまりされなかった」と答えた。