残したい郷土の味 〜菜膳わたすげ 山本康子さん〜
残したい郷土の味
 郷土料理とは、その土地土地で採れる旬の野菜や山菜、海産物などを使い、素朴ながらも工夫を凝らしたものだ。八戸地方では、昔からヤマセ(北東から吹き付ける冷涼で湿った風)という厳しい気象条件の下、雑穀や根菜類に頼らなければならなかった一方、海に目を向ければ豊かな漁場に恵まれ、魚介類を使用した地域ならではの料理や保存食が親しまれてきた。
 せんべい汁、いちご煮…。八戸の郷土料理と言えば、数々のメディアに取り上げられ、全国区になったこれらを思い浮かべる人もいるかもしれないが、八戸にはもっともっと地に根ざした味わい深い品々がある。

 昭和の頃まで当たり前のように代々家庭で受け継がれてきた郷土料理。しかし、核家族化や外食の拡大、食の西洋化の流れが進むと徐々に食卓から姿を消し、味の伝承は難しくなっている。
 「このままでは、私がこの地域の味を伝えられる最後の一人になってしまうかもしれない」。八戸市の料理研究家・山本康子さんは危機感を募らせる。そんな山本さんに四季折々の逸品を紹介してもらい、あらためて郷土料理のすばらしさに触れてみたい。
山本康子氏
菜膳わたすげ 山本康子さん
 1950年、八戸市生まれ。八戸文化服装学院卒。2005年、NHK文化センターで料理の講師を始める。06年8月、自宅を改装して料理店「菜膳わたすげ」を開店。12年には八戸前沖さばアイデア料理コンテストでグランプリを受賞。現在は同市を中心とした公民館や高校で講師を務め、郷土料理の普及に努める。