Freeお手製の五輪博物館に幕 埼玉・川越の武山さん(八戸出身)

埼玉県の川越市立博物館に展示される自身のコレクションを見詰める武山正伸さん
埼玉県の川越市立博物館に展示される自身のコレクションを見詰める武山正伸さん

埼玉県川越市の自宅を「五輪博物館」として公開していた八戸市出身の元教員、武山正伸さん(72)のコレクションの一部が、東京五輪の記念展を開催中の川越市立博物館に並んでいる。病と闘う体調面を考慮して自宅を「閉館」したため、展示を終えた後は母校の国士舘大に引き取ってもらう考えだ。待ち焦がれた祭典は異例のまま終幕し、自身のライフワークも間もなく区切りを迎える。それでも武山さんは「心は青空」と万感の思いをにじませる。

 長年かけて集めた約300点の五輪グッズを、自宅で展示し始めたのは昨年6月。コロナ禍での大会開催を巡る批判にためらいもあったが、自らの経験を通じて五輪の魅力を伝えたい一心だった。

 大の運動嫌いだった小学6年の時、ローマ五輪のテレビ放送に魅了された。陸上競技に目覚め、その4年後に開かれた前回の東京大会では青森県立三戸高の陸上部として聖火リレーの伴走役に。大学を経て体育教師の道に進み、教え子からは国体や高校総体覇者も生まれた。

 前途を切り開いた五輪は、武山さんに「最後まで諦めず、乗り越える強さを持つ」という人生訓を授けた。思いに共鳴した生徒とは、卒業から数十年たった今も交流が続く。「五輪を辞めろという声も本当に分かる。自分が、身内がもし感染したら。でも。だからこそ大会を少しでも後押ししたかった」

 自宅には取材が相次ぎ、遠くは香港のテレビ局も足を運んだ。それでも、がんなどを患って入退院を繰り返す体力に限界が迫り、6月いっぱいで閉館。貸し出しの打診を受けた市立博物館で9月5日まで開かれている記念展が、最後のお披露目となりそうだ。

 「死ぬまで五輪を見守っていきたい」と武山さん。「現代のような商業化とは一線を画し、昔のように純粋に競技を楽しめる平和の祭典であってほしい」と行く末を願った。

 
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