Free【あの日の天鐘・震災5日目】2011年3月15日 

本紙1面のコラム「天鐘」は東日本大震災をどのように伝えたか。震災5日目3月15日の朝刊より。

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 死者、行方不明者5千人を超す東日本大震災について、海外メディアも大きく伝えている。激しい揺れと巨大な津波、それに原子力発電所の事故…。しかし、外国人が注目するのはすさまじい惨状だけではない▼深刻な被害に見舞われながら、冷静に行動する日本人に称賛の声が上がっているという。難を逃れた人も救援活動に加わる。水や食料を求める人々は整然と行列に並ぶ。大規模なパニックは見られない、という具合▼直面する危機から立ち直るため、忍耐強く、力を合わせる日本人がまぶしく映るらしい。英国のある新聞は、1面に日の丸を配し、その上に日本語で「がんばれ、日本。がんばれ、東北」と見出しを掲げたそうだ▼だが、忍耐を美徳として被災地に押し付けてはならない。例えば、ガソリンや軽油などの車両用燃料の不足は、物資の円滑な輸送を妨げる。被災者の耐乏生活にも限度がある。国が備蓄放出の方針を示したのは当然だ▼東京電力は計画停電に踏み切った。これが電力の大消費地である首都圏の暮らしを守るための「自社の都合」でないことを願う。被災地の苦渋を分かち合わないと国民的な苦難は乗り切れない▼阪神大震災では病気を抱える高齢者や幼児、障害者など災害弱者への援助が行き届かなかった反省が指摘された。支援が必要なのは避難所にいる人だけに限らない。これ以上の災害難民を出さずに、未曽有の災害から復興への道を歩みたい。

 
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