Free下風呂温泉の2公衆浴場閉館/風間浦、1世紀超の歴史 新浴舎1日オープン

閉館した新湯ののれんを手にする湯番の女性ら=30日、風間浦村
閉館した新湯ののれんを手にする湯番の女性ら=30日、風間浦村

風間浦村の下風呂温泉郷にある公衆浴場「大湯」と「新湯」が30日閉館し、100年以上にわたる営業に幕を下ろした。浴舎の老朽化が原因で、両浴場に湯を供給していた源泉は、1日に温泉郷内に開業する村営の新浴舎「下風呂温泉『海峡の湯』」に受け継がれる。質素で昔ながらの趣を残し、多くの人たちに愛された大湯と新湯。独特の風情が失われることに、常連客や観光客からは「寂しい」など惜しむ声が上がった。

 下風呂は室町時代の下北半島の地図に「湯本」と記載されるなど、古くから湯治場として親しまれてきた。江戸時代には湯守が置かれ、営業してきた歴史がある。大湯と新湯は近くに立地しながら泉質が異なり、それぞれファンが存在。大湯に毎日通う地元の木村正さん(75)は「お湯の質がいいし、湯冷めしない。時代の流れとはいえ、閉館は寂しい」と残念がる。

 両浴場は共に浴槽と洗い場があるシンプルな造り。村民や観光客が湯船に漬かりながら世間話や情報交換などをし、親交を深める場でもあった。一方で建物は昭和20年代ごろの建築で、老朽化が進み、これまでも何度か建て替えが議論になっていた。

 閉館が決まって以降、村近隣ばかりでなく、全国からの入浴客も増加傾向で、最終日も多くの人が訪れ、思い思いに別れを惜しんだ。今年3回目の訪問で、両浴場に入浴した栃木県足利市の玉置武司さん(59)は「お湯はもちろん、ひなびた雰囲気が良かった。閉館は残念だ」と語った。

 この日は両浴舎前でそれぞれ閉館セレモニーも行われ、湯番の女性たちに花束が贈られた。蛍の光が流れる中、のれんが下ろされると、集まった住民らから拍手が沸き起こった。新湯の湯番を2年ほど務めた丸山つた子さん(77)は「新湯も大湯もそれぞれ良さがあった。新しい浴舎も皆さんに愛されるようになれば」と願っていた。
閉館した新湯ののれんを手にする湯番の女性ら=30日、風間浦村

 
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