Free紺野代表(八戸出身)「アートを身近に、より良い社会を」/オンライン美術館「HASARD」

オンラインでの取材に、「アートが身近になり、より良い社会になってほしい」と話す紺野真之介代表=7月下旬
オンラインでの取材に、「アートが身近になり、より良い社会になってほしい」と話す紺野真之介代表=7月下旬

誰でも、好きな時に、無料でアートに触れられる美術館がある。取りそろえるのはクロード・モネやグスタフ・クリムトといった著名な画家から、国内の無名アーティストまで多岐にわたる。オンライン美術館「HASARD(アザー)」は、2019年4月の“開館”以来、その利便性と新しさから利用者の心をつかみ、コロナ禍による新たな生活様式を機に、注目度がさらに高まった。サイトを立ち上げた八戸市出身の紺野真之介代表(26)=東京都在住=は「誰もがアートを手軽に楽しめるサービスを作りたかった。つらい状況下こそ、芸術に触れてほしい」と話す。
 アザーを訪れると驚かされるのが、展示の豊富さと画像の美しさ。24日現在で常設展と企画展の計14の展覧会を公開しており、色彩だけでなく、筆の質感まで伝わる超高解像度の作品が見る人を引き付ける。会員登録や入場料は不要で、見る側だけでなく、個展を開きたいアーティストも費用がかからないのが特徴だ。
 オンラインならではの見せ方も注目を集める。絵を動かすのもその一つ。クロード・モネの常設展「それは再び 動き始める」では、雲や花、草原などが動くようにデジタル加工を施している。「アートに関心が低い人も入り込めるようにしたい」(紺野代表)との思いからで、絵の中にいるような感覚を味わえる。
 紺野代表とアートの出合いは小学生の頃。当時、完成したばかりの青森県立美術館に家族と訪れた際に、マルク・シャガールの「アレコ」の巨大な3枚の絵を見て、その迫力に衝撃を受けた。次の日から美術の授業は楽しい時間に変わり、大学進学を機に上京した後も、ギャラリーなどに足を運ぶようになった。
 同時に、美術館が近くにない、大きな企画展は首都圏開催ばかりで、育児で外出が難しいなど、さまざまな観点から、美術と触れ合う機会をあまり持てない人が多いとも感じた。そこで、IT関連会社で働く傍ら、約2カ月間をかけ、インターネット上でアートを鑑賞できるサイトを立ち上げた。利用者数は開始10カ月で平均月1万人に達し、新型コロナの感染拡大後は、約3万人に増加した。
 どんな人でも見たい時に、自由な形で芸術を鑑賞できたら―。アザーの狙いは、コロナ禍により、図らずもより多くの人に受け入れられた。紺野代表は芸術鑑賞の意義について、想像力を豊かにしてくれると強調。「想像力が豊かになると、困っている人に手を差し伸べられるようになる。アートが身近になることで、より良い社会になってほしい」と思いを込める。