Free埼玉出身の19歳、階上で憧れの漁師に 漁業体験に参加、移住決意
さいたま市出身の新人漁師が階上町の沿岸で漁に励んでいる。テレビで見たマグロ漁師の姿に引かれ、漁業の門をたたいた戸村瞭宏さん(19)だ。青森県主催の漁業体験を経て、昨年4月、主に定置網漁を手掛ける同町の開成漁業(上長根司社長)に就職した。「漁は楽しい。もっと勉強して一人前になりたい」と意気込む。
「海がない県」とも言われる埼玉県に生まれた戸村さん。漁師の仕事に興味を持ったのは、中学、高校の時に毎年見ていた大間町のマグロ漁師に密着したドキュメンタリー番組だ。大きなマグロを釣り上げる男たちの背中に憧れた。「とてもかっこよかった」。海への憧れは強くなっていくばかりだった。
高校3年の時、インターネットで漁師の求人を探していた戸村さん。全国各地の漁業関係の仕事を紹介するホームページ「漁師.jp」で偶然、青森県が主催する漁業体験教室を見つけた。他県の漁業関連の求人も見たが、「唯一日程が合った」という青森に迷わず申し込んだ。親戚がいるわけではなく、特別な縁はない。「漁師の仕事をとにかく経験してみたかったから」と率直に振り返る。
18年10月、階上町で行われた3日間の漁業体験に参加。漁港を出て15分程進んだ海上で、定置網漁を体験した。初の船酔いに苦しんだが、サケやブリを引き揚げる達成感が勝った。
漁師になることを改めて決意。漁業体験に同行した父へ思いを明かした。父からは「親戚はいないし、1人暮らしで全部をやらないといけないぞ。大丈夫か」と問われたが、戸村さんは「大丈夫」と迷わず返答した。帰省したり、家族や友達と時々連絡を取ったりしており、地元を離れた寂しさは特に感じていないという。
戸村さんの働きぶりについて、先輩の上長根優大さん(25)は「仕事の覚えがよく真面目」と高く評価。「遠く離れた地域から、志を持って漁業の世界に飛び込むことはすごいと思う。久々に若い人が入って、会社の活気が出る」と喜んでいた。
青森に移住してから、今年4月で1年を迎える。初めて体験する東北の冬は「寒さには強い自信があるほうだったけど、やっぱりすごく寒かった」と笑う。今後の目標は、「とにかく先輩の仕事をよく見て、一連の作業をスムーズにできるようになりたい」。埼玉を飛び出した若き漁業者の向上心は尽きない。