Freeお食事のデパート「㐂代志」、多くの人に惜しまれ70年の歴史に幕

会話に花を咲かせながら店での最後の食事を楽しむ来店者たち
会話に花を咲かせながら店での最後の食事を楽しむ来店者たち

ナポリタンに焼き鳥、パフェ―と、250種類を超す豊富なメニューは店名に冠した「お食事のデパート」の証し。約70年にわたり八戸市民に愛されてきた老舗「㐂代志(きよし)」が9日、歴史に幕を下ろした。湊町の“シンボル”として家族連れや漁師らに親しまれてきたが、長らく続いた人手不足が決め手に。最終日もひっきりなしに市民が訪れ、社長の中村幸男さん(71)は「ここまでやれたのはお客さんのおかげ。感謝しかない」とかみ締めた。
 三戸町出身の父潔さんが店を立ち上げ、1958年から現在の場所に。増改築を繰り返し、店内には寿司部、居酒屋部、焼き鳥部、食堂部を構え、屋台村スタイルの独自の店舗を築き上げた。
 ここ数年は、地域経済の低迷や消費税増税などにより売り上げが減少。店舗の老朽化や新型コロナウイルスの感染拡大もあり、2月に店を閉じる決断をした。
 今月3日ごろから会員制交流サイト(SNS)上で閉店の情報が広まると、一気に予約が殺到。電話は鳴り止まず、突然の別れに涙を流す常連客も現れたり、花束も届いたりと、連日の大にぎわいとなった。
 迎えた最終日も開店前から長い列ができ、ファンたちが最後の食事を楽しんだ。店側も来店者に店名の入った湯飲みを贈り、一人一人に感謝を伝えた。
 家族で訪れた八戸市の水産加工業尾崎正徳さん(37)は「自分の七五三のお祝いでも家族で来た。ここで過ごした時間はかけがえのないもの」と振り返り、お気に入りのナポリタンを感慨深くほお張った。
 中村さんと共に店を支えてきた妹の文江さん(63)は「多くの人に愛され、思い出の味になっている。これからも㐂代志の名前を忘れないでもらえたらうれしいな」とあふれる涙をそっと拭った。
会話に花を咲かせながら店での最後の食事を楽しむ来店者たち

 
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