Free【デジタル限定】岩手県立博物館(盛岡)の「驚異の部屋」をのぞいたら、博物館の懐の深さに驚いた

盛岡市の岩手県立博物館から、テーマ展を開いているとの案内があった。その名は「驚異の部屋~博物館の珍品・お宝大集合~」。「驚異」という、興味をそそるワードに胸を躍らせて、行ってみた。
(盛岡支局長F)
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迎えてくれたのは、テーマ展を担当した近藤良子主任専門学芸員。「あそこに広げてある物を見てください」。手が指す方向に、天井からつるされた長い布のような物が。正体はブラジルに生息するオオアナコンダの皮。長さ約5メートル、特徴的な斑点模様が見られる。
寄贈は開館翌年の1981年。日本人がブラジルで採集して寄贈してくれたそうだが、実のところ詳細はよく分からない。現地で買った物なのかもしれない。
生物部門の収蔵庫に、ぐるぐる巻きの状態でしまってあったのを見つけ、3カ月かけて延ばしてみた。展示できないかと考えたが、そもそもアナコンダは岩手にいないので、単品では難しい。近藤さんは「他の部門にも、しまっている資料の中に不思議な物があるのでは?と考えたのが始まりです」と教えてくれた。
「驚異の部屋」とは何か。欧州では15~18世紀に、王侯貴族らが世界中から集めた貴重な美術品、珍奇・不思議な物を保管・陳列する特別な部屋が、各地に作られた。権威や富の象徴でもある部屋はヴンダーカンマー(ドイツ語で「驚異の部屋」「不思議の部屋」の意味)と呼ばれた。現代の博物館や美術館の原型とされ、テーマ展の題名はその呼び名にちなんだ。

県立博物館は今年3月末現在、約39万点の資料を収蔵する。このうち常設展示されるのは約2千点。今回は常設展示されていない資料の中から、めったにお目にかかれない約300点を紹介している。
展示は、(1)変わった物や不思議な物、きれいな物を集めた「驚異の部屋」(2)買うと高い「高額な部屋」(2)個人や研究者が情熱を注いだコレクションを並べた「蒐集(しゅうしゅう)の部屋」(4)見た目が恐ろしい物や信仰にまつわる道具などを集めた「危険な部屋」(5)学芸員の仕事を紹介する「学芸員の部屋」―の五つの部屋で構成される。
「驚き」「興味」「笑い」。見る物全てに心を動かされ、いろんな感情がわき起こった。展示資料をいくつか紹介する。
まずは上野動物園にいたジャイアントパンダのふんの標本。ふんも収蔵するのか!と驚いたが、パンダの生態を調べる上では役に立つ資料だという。臭いはする? 「しませんよ。樹脂で固めてあります」(近藤さん)。できたて?はどんなにおいがするのだろう。想像が膨らんでくる。