Free楽しい企画で盛り上げたい 軽米・武甕槌神社 禰宜の工藤慎一さん
軽米町山内で創建約400年の伝統を誇る武甕槌(たけみかづち)神社は、絵柄が毎月変わる御朱印や、特大おみくじなどのユニークな取り組みを続けている。仕掛け人は禰宜(ねぎ)の工藤慎一さん(39)。「人口減少が進む中、町内外から人を呼び込む楽しい企画で地元を盛り上げたい」と意気込み、インスタグラムなどの交流サイト(SNS)で幅広い世代に発信して注目を集めている。
町出身で、都内の大学を卒業後、23歳でUターン。地元で働きつつ、父敬一さん(72)が宮司を務める同神社の手伝いを続ける。
2022年春、神社の知名度を高めようと、まずはオリジナルの御朱印を自作。デザインは当初季節ごとに変えていたが、好評だったため23年から毎月2種類ずつ有料で頒布している。
地元のチューリップ園や桜、紅葉などの風景と、「軽米秋まつり」、神社の例大祭といった行事を自分で撮影し、画像処理ソフトで加工。イラスト化して半紙に印刷し、完成させる。
カラフルな色や季節感を意識し、例えば夏の御朱印では、花火とナニャドヤラの踊りを組み合わせた絵柄も。「軽米に観光などで立ち寄った人が、良い思い出の一つとして持ち帰ってほしい」とし、リピーターにもつながるよう期待する。
さらに、若い世代の関心を引くような写真映えする物も必要と考え、23年春に特大おみくじの箱を製作。岩手県産スギの部材を入手して組み立て、高さ約1メートル20センチ、重さ約8キロある「大(おお)みくじ」と称して社殿前に置いた。
他にも岩手県大船渡市の業者の商品を活用した、炭酸飲料「神社エール」を有料で頒布。年末年始の夜間に、鳥居や神社周辺の柵を発光ダイオード(LED)の光で華やかにライトアップする試みも行っている。
SNSで発信すると、東北各地や関東地方など遠方からも珍しがって訪れる人が増えた。大みくじは「予想以上に大きくて驚いた」といった感想や、女性が頑張って持ち上げる写真などが投稿され、徐々に人気が広がった。月替わりの御朱印を欠かさず集める、熱心なファンもいるという。
新たな企画を次々に仕掛ける一方、地域の伝統を守りたいという思いも強い。神社の集会所では週2回、山内神楽保存会が地元の小中学生と一緒に神楽の稽古に励み、慎一さんも会の一員として舞を指導する。
参加する町立軽米中3年の古舘和華(のどか)さん(15)は「年の違う人と会話しながら、一緒に練習するのは楽しい」と笑顔。御朱印も集めており、「神社が他地域からも注目されているのはうれしい」と話す。
慎一さんは「子どもが集まり、伝統の神楽を通じて故郷に愛着を深めているのは大きな意義がある」と強調。今後も多くの人に親しまれる神社を目指すとし、「初詣には御利益のある大みくじを、家族や友人とわいわい楽しみながら引いてほしい」と呼びかける。