Free畳の可能性追い求め 伝統と革新、海外進出も 中村畳工店(五戸)8代目・渉さん

「自分が歩んできた人生だからこそ生み出せる商品を作っていきたい」と意気込む中村渉さん=昨年12月、五戸町

奈良時代から千年以上にわたり、日本の生活様式を支える文化として根付いてきた畳。五戸町の中村畳工店で8代目店主を務める中村渉さん(45)は「伝統と革新」を意識し、オリジナリティーにあふれた数々の商品を生み出してきた。「自分の人生がこだわり」と語り、これまでの職業経験と人との出会いを、畳の新たな可能性を追求に生かしている。

1800年に創業した、五戸地方では最も歴史のある畳店に生まれ、畳は幼い頃から身近な存在だった。

野球で本格左腕として頭角を現し、プロで3年間プレーした。退団後はサラリーマン生活も経験した。しかし住宅の洋風化で畳離れが進む現状を目の当たりにし、畳職人として生きることを決心。2016年に家業を継ぐと、伝統を意識しつつ、新たな畳製品の開発を意識した経営に努めてきた。

畳と革のコラボ商品ブランド「WALT’Z」を立ち上げ、野球のグローブや名刺入れなどを開発。トートバッグは、23年に全国の有名企業が審査する「OMOTENASHI Selection」を受賞した。

そして、アウトドア畳用品ブランド「UNDER THE SUN」の立ち上げが、大きな転機となる。町内のイベントに出店した際、「一緒に面白いことをしたいね」と声をかけられた。アウトドアブランド「フェニックスライズ」(同町)を展開する赤坂太樹代表だった。

中村渉さんが開発した商品の数々

以来、サウナ用マットやテーブルなどのコラボ商品を世に送り出した。昨年9月には青森県物産振興協会主催の県特産品コンクール工芸部門で、アウトドア畳マットが県物産振興協会長賞を獲得。「五戸の人の力を結集した結果が認められてうれしかった」と中村さんは振り返る。

地元での仕事を大切にしつつも、将来的な海外進出も見据える。中村さんは「海外の人に評価してもらうことで、日本人が新たな畳の価値に気付いてくれるような、そんな流れを作れたら」と意気込んだ。

【略歴】なかむら・わたる 1979年、五戸町生まれ。小学生時代から野球選手として活躍し、2005年から3年間、プロ野球北海道日本ハムで投手としてプレー。16年に家業を継ぎ、中村畳工店8代目店主となる。住宅用の畳を中心に手がける傍ら、革製品やアウトドア用品などとのコラボ商品の開発にも取り組む。

 
お気に入り登録