Freeハチのような不思議なガ 青森県立郷土館で展示中

県立郷土館で展示されているスカシバガの標本=29日、青森市
県立郷土館で展示されているスカシバガの標本=29日、青森市

ハチにそっくりなガ「スカシバガ」の新種「クロビロードスカシバ」が弘前市で発見された。発見したのは日本鱗翅学会の東北地区自然保護委員長を務める同市の工藤忠さん(62)と息子の誠也さん(31)。今年10月、工藤さん親子と日本蛾類学会の岸田泰則会長の連名で日本蛾類学会誌「TINEA」に発表した。12月26日まで県立郷土館(青森市)に標本が展示されており、貴重なガを見ることができる。
 展示を担当する学芸員の太田正文さん(62)によると、スカシバガは鳥などの天敵から身を守るため、ハチによく似た姿に擬態。スカシバ(透かし羽)の名前は、ハチに擬態するために進化した透明な羽に由来する。ガの多くは夜に活動するが、スカシバガは天敵にハチだと誤認させ、昼に活動する。
 クロビロードスカシバは黒い体と腹部の黄色い帯が特徴で、羽を広げた大きさは約3センチ。2018年6月、弘前市相馬地区で工藤さんらがスカシバガを引き付けるフェロモンを用いて調査中、偶然飛来した。標本を岸田会長へ送り、同類の他種と比較した結果、新種と判明した。
 工藤さん親子は14年にも、岩木山で新種の「ミチノクスカシバ」を発見。太田さんは、忠さんが作る精緻な標本が新種の発見に一役買っていると分析する。
 飛んでいるガを網などで捕まえると暴れて鱗粉(りんぷん)や羽が傷つくことから、忠さんはプラスチックの小さなケースを用いて捕獲。直後に氷を入れたクーラーボックスにしまうため、ガは動かなくなる。生きていた時の姿のまま標本にでき、より正確な比較が可能という。
 スカシバガは世界各地に分布。日本には約40種、県内には19種が生息する。クロビロードスカシバは同地区で10個体ほどしか確認されておらず、生態も明らかになっていない。
 郷土館エントランスホールの展示場には発見した新種に加え、工藤さん親子が県内で捕獲したスカシバガ9種の標本も展示。それぞれ擬態のモデルとなるハチが異なり、スズメバチに似ているもの、ハナバチに似ているものなどさまざまだ。太田さんは「ここまできれいに整っている標本はほかにない。ハチのような不思議なガを通し、自然界の面白さをのぞいてほしい」と話している。
 会期中の休館日は12月6日。観覧料無料。