Freeかむ力が弱い高齢者にも一流の食事を 八戸の割烹銀波が老人ホームで日本料理提供

高齢者も安心して楽しめる食事を提供した城前孝史店主(右から5人目)=9月25日、八戸市 
高齢者も安心して楽しめる食事を提供した城前孝史店主(右から5人目)=9月25日、八戸市 

高齢になっても食事を楽しんで―。八戸市の割烹銀波の城前孝史店主は、かむ力が弱くなった高齢者が食事を楽しめるように工夫を凝らした食事の提供に取り組んでいる。9月には同市石堂の有料老人ホームベルメゾンK(佐藤美香子施設長)で食感や喉ごしにこだわった高齢者向けの日本料理を提供。城前店主は「高齢者の食事は配慮すべき点が多い。どうしたら高齢の方にも楽しんでもらえるかを考えるきっかけになった」と今後に意欲を燃やす。
 同施設は同市石堂のくまさか歯科(熊坂覚院長)のグループ会社が運営。高齢になっても元気に食事をしてほしいとの理念の下、口腔ケアに重点を置いた介護事業を展開している。
 熊坂院長が「施設利用者に一流の日本料理を味わうイベントを開きたい」という考えを城前店主に伝えたところ、日頃から小学校で食育講座の講師をするなど啓発活動に取り組む城前店主が施設の理念に共感。イベントの協力を申し出た。
 高齢者の食事は、誤嚥(ごえん)なく安全に食べられるよう調理するのが大前提。城前店主は、柔らかくしつつ食感が残るよう煮込み時間を調整したり、飲み込みやすい状態にしたりと試行錯誤した他、施設職員と何度も打ち合わせをするなど、入念に準備を重ねた。
 9月25日、昼食に合わせて城前店主が施設の調理スタッフと共に腕を振るったメニューのテーマは「秋の一汁三菜」。利用者がリクエストした寿司は「バラちらしごはん」で対応し、ご飯を通常よりも柔らかめに炊き具材も食べやすい一口サイズに仕上げた。
 松茸とエビのすり身のお吸い物は、エビのすり身に刻んだエビを混ぜることでエビの食感を残した。全体的に「だし」を効かせ、素材のうま味を引き出すことで塩分量を減らすなどの工夫を凝らした。
 介護食の基本を押さえながらもプロの技が光る見た目も美しい品々が並び、利用者は一口一口じっくりと味わっていた。玉川美智惠さん(87)は「固すぎず柔らかすぎず食べやすかった。いいお味で最高」と顔をほころばせていた。
 施設での食事提供は、城前店主と施設スタッフ両者にとっても貴重な機会となった。城前店主は「高齢者施設では普通食の他、刻み食、薬との飲み合わせなど個人の状態の配慮が必要になる。その上でおいしく食べられるように工夫して準備をしたのはいい経験になった」と実感を込める。
 施設スタッフ側も「盛り付け方に気を遣うだけで印象が変わる。『食の彩り』という部分がとても勉強になった」と充実した様子。佐藤施設長は「利用者さんの喜ぶ姿を見ることができてうれしい。食事は健康の基本。機会があればまた企画したい」と話していた。