Free時評(9月29日)

大津波が襲来した時、どうやって漁船を守るべきか。海と暮らす漁業者が向き合わなけばならない課題である。おいらせ町と百石町漁協が、青森県の協力を得て津波に備えた百石漁港での漁船避難ルールを策定した。
 ルール作りは、東日本大震災を踏まえて行われた。震災時、県内では約450隻が漁船の損壊を回避するため、沖に避難する「沖出し」を実施した。被害はなかったが、漁業者個々の勘や経験に頼った危険な沖出しも見られた。
 事態を受け、県は2015年1月にルール作りの指針を公表。まずむつ市の関根漁港と階上町の小舟渡漁港をモデル地区に策定した。今回の百石漁港を対象としたルール作りはモデル地区以外では初の試みとなった。
 漁業者が陸上にいる場合と海上にいる場合で対応は分かれている。陸上滞在時は、20分以内に港外に脱出できるときに沖出しする。その時間を過ぎると、第1波より大きな波となる可能性が高い第2波の襲来までに、安全が確保できる海域へ避難するのが困難となるためだ。
 海上にいるときでも、十分な速度が出ない船外機船での避難は避け、陸上に逃げるか、帰港が難しい場合は動力船に乗り移るとした。陸上、海上共に危険が伴う夜間(午後4時~午前5時)は原則避難せず、行動を取るのを日中(午前5時~午後4時)に限った。
 こうした行動計画は、実証実験を経て取りまとめた。ただし実際は、地震発生による交通規制や道路の寸断で漁港に行けない事態のほか、家族の安否確認や人命救助に追われる可能性もある。最優先で守るべきは命だ。その時の状況に応じた行動が重要になる。
 だからこそ訓練を重ね、実効性を高めていかなければならない。漁船避難か陸上避難かの判断が難しい場合など想定される課題を一つ一つ検証し、精度の高いルールとしていく継続的な取り組みが不可欠だ。
 今回のルール作りの過程では、沖に出た漁船に陸上から支援物資を届ける方法として、小型無人機ドローンの活用も検討された。実証実験では2~3キロ沖合いまで輸送が可能で、7分弱でその距離に到達できることが確認された。
 一度に運べる量は決して多くない。漁船位置を正確に把握する必要もあり、検証が欠かせない。課題をクリアし、避難後の支援態勢もできるだけ早期に整えたい。輸送の一つとして確立されれば、避難する漁業者の安心につながるはずだ。