Free“攻めの地域医療”に挑む 無医地区に開院、遠方からの来院者確保へ

城内地区で地域医療に取り組む林彰仁院長=洋野町
城内地区で地域医療に取り組む林彰仁院長=洋野町

無医地区だった洋野町城内地区に、昨年6月開院した内科・呼吸器内科「じょうないクリニック」。院長の林彰仁(あきひと)さん(46)は、地域に根差した診療と並行して、周辺地域ではなかなか受けることができない治療を提供することで遠方からの来院者の確保に乗り出している。人口減少が加速する厳しい現状にあっても、真摯(しんし)に地域住民と向き合う姿勢を原点に「“攻めの地域医療”で生き残りを懸けたい」と意気込む。
 旧南郷村で生まれ育った林さん。医学の道を志すきっかけの一つになったのは、幼い頃に通院していた医院の温かい雰囲気だった。地域のお年寄りが待合室に集まって話に花を咲かせ、医師は細かな気遣いでいろいろな症状に対処する―。住民同士をつなぐ寄合よりあい所のような空間に憧れた。
 1999年に島根医科大医学部(現・島根大医学部)を卒業。研修医を経て青森県内などの病院で勤務し、40歳からは八戸市立市民病院で働いた。忙しい日々を過ごす中、「一人一人の患者に時間を掛けて向き合いたい」と地域医療への思いも諦めきれずにいた。
 その頃、城内地区で福祉施設を運営する同町の社会福祉法人尽誠会(鈴木修理事長)が、施設に隣接したクリニックの開設を検討していた。林さんにとっては見ず知らずの土地だったが、医療と福祉の連携や、地域に密着した医療に携わることができると、新天地での勤務を決意した。
 約890人(2016年10月末現在)が暮らす城内地区に、クリニックが開設されて1年余り。地元住民からは「近くに医療機関ができて安心した」という声が寄せられ、林さんは、それぞれの患者に丁寧に向き合いながら、少しずつ地域の信頼を得てきた。
 一方、人口減少の波は想像以上に深刻で、院長として経営を維持するため、患者をどう確保していくかという、へき地ならではの課題にぶつかった。町中心部や八戸、久慈といった市部からは離れており、来院したある住民から「何でこんな所に開業したんだ」と聞かれたこともあった。
 それでも、地域で長く続けることに意味がある―との思いから、林さんは「遠くからも来院してくれるような治療を提供する」という新たな方針を立てた。
 県外へ研修に赴いて技術を磨き、今春から、鼻の奥の炎症部分に薬液をすり付けるEAT(上咽頭擦過療法)と呼ばれる特殊な治療を開始。周辺で実施している医療機関がほぼなく、青森県南地域や盛岡市といった遠方から訪れる人が少しずつ増えてきたという。
 今後も、地域住民や施設入所者への診察を続けながら、新たな治療を随時取り入れることによって、地区外からの来院者も増やす考え。林さんは「さまざまな障壁はあるが、ここでしかできない診療所の形を目指す」と意欲的だ。