Free十和田湖温泉郷 異例の“改名” 「奥入瀬」でブランド再構築

来年4月から新名称となる十和田湖温泉郷の入り口  
来年4月から新名称となる十和田湖温泉郷の入り口  

十和田市焼山地区とその周辺にある温泉の総称「十和田湖温泉郷」について、地元の旅館組合と町内会は半世紀以上の歴史ある名称を、2020年4月から「奥入瀬渓流温泉」に変更することを決めた。全国的にも極めて異例となる温泉地の“改名”は、場所と名称の隔たりを修正する以上に、国内外の観光客から知名度が高い「奥入瀬渓流」を冠して、ブランドの再構築を図るのが狙い。今後はより拠点性を高める取り組みが不可欠となりそうだ。
 「素晴らしい名前となりみんなで喜んでいる。積極的に国内外にアピールしていく」
 7月22日、同市の奥入瀬渓流館で開かれた新名称発表会。一堂に並んだ地元や観光関係者を代表し、温泉旅館「野の花 焼山荘」の女将で、同温泉郷旅館組合の堀向直子組合長は再出発を宣言した。
 全国では観光地に合わせて、駅名や高速道路のインターチェンジ名を変更した例はあるが、長く親しまれた温泉地そのものの名称変更は異例だ。温泉郷が命名されたのは1963年。抜群の知名度を誇る十和田八幡平国立公園の、十和田湖の玄関口として名付けられたようだ。
 一方、同湖から14キロも離れている上、2002年12月の東北新幹線八戸開業を契機に、同湖畔に立地する温泉の総称「十和田湖畔温泉」エリアが誕生。周辺には猿倉、蔦、谷地といった個性的な温泉もあり、温泉郷の位置付けが分かりづらくなっていた。
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 奥入瀬渓流温泉エリアにはホテルや旅館、保養所、民宿が9施設ある。十和田市版DMO(観光地域づくり推進法人)「十和田奥入瀬観光機構」によると、同エリアの18年度の宿泊者数は、13万5036人と市内の4割を占め、うち外国人は2万9803人に上る。
 東日本大震災後は落ち込んだものの、近年ではインバウンド(訪日外国人旅行)の増加を背景に回復基調。特に集客力のある星野リゾート奥入瀬渓流ホテルが、17年度から冬季営業を再開させた影響が大きい。
 「野の花 焼山荘」の若女将を務める山田洋子さんは「周辺のホテルや旅館にも一定の相乗効果がある」とした上で、「日本人の観光客も増加している。旅行の形態も団体から個人に変わっている」と指摘する。
 地元では20年の東京五輪・パラリンピックを前に、十和田湖と並ぶ観光地に成長した「奥入瀬渓流」を前面に押し出し、誘客の弾みにともくろむ。
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 十和田市は、焼山地区を十和田湖、奥入瀬渓流、八甲田のみならず、津軽地方を結ぶ「交通の要所」として捉え、エリア全体の魅力向上を目指す。
 奥入瀬渓流館は、渓流を散策する来訪者を受け入れるため、ガイドの拠点施設に改修し、駐車場の公衆トイレも改築する。十和田湖温泉スキー場は、冬場のスキー場として十分な機能を整備しつつ、通年利用が可能な場所としたい考えだ。
 市農林商工部の本宿貴一部長は「名称変更で国内外への発信力が強まった。今後は拠点性を高める施策を講じ、長期滞在やリピーターの増加につなげたい」と相乗効果に期待を寄せた。