Free第21回 自分は「何者」か

【三浦委員長の近況】アルバム発売に伴うアコースティックミニライブの様子です。歌を聴いて泣いてくれる人がいるのは、本当にうれしいことです。曲づくりが報われた瞬間です=大阪市内

〈2017年4月25日掲載〉

高校と大学の卒業時に私が抱いていたのは、期待ではなく不安でした。自分の肩書がなくなることが、とても怖かったのを覚えています。

大学で勉強することは自主性を求められます。4年間の大学生活を充実させられればとても素晴らしいのですが、当時の私には本気で学びたいことがありませんでした。周りのみんなは前向きに学ぼうとしている中で、自分だけが置いてけぼりにされる感覚は、とても心細いものでした。

大学を卒業して就職する時も同じでした。自分がやりたい仕事がなかったのです。学生でなくなる時に自分に何が残るのか、考えても見つかりませんでした。焦って本を読んでみたり、いろいろなアルバイトをしてみたりと外の世界で自分探しをしてみました。しかし、運命的な出会いがあるはずもなく、結局は自分自身と向き合うことになりました。

自分が今まで生きてきて何が好きだったのか、何をしている時が楽しかったのか。それを考えた結果、この先もやりたいことが唯一音楽でした。生活費を稼ぐために仕事をし、ほそぼそと音楽を続けていた私ですが、今は音楽が仕事になっています。とても幸運だと、卒業シーズンになるたびに改めて思うのです。

私がやっている「空想委員会」というバンドが最近発売した「デフォルメの青写真」というアルバムの3曲目に「何者」という曲が収録されています。この曲はまさに私が卒業の時に抱えていた不安や焦りを歌った曲です。

発売に伴って各地のCD屋さんでアコースティックミニライブをやっているのですが、「何者」を聞いているお客さんの中に泣いている方がいるのに気付きました。それを見た時に、「私と同じように不安を抱えながら、自分が何者なのか探している最中なのだな」と分かりました。歌を通してつながった感覚が、確かにありました。

今まさに自分が何者なのか分からずおびえている方に伝えたいです。自分が何に心を動かすのかしっかり見極めて、見つけたら、それを離さないでください。あなたはあなたになれる日が来ます。私でさえ今では自分は自分だと言えるようになったのですから。心配しなくて大丈夫。

 
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