Free【行路】障害ある子とともに絵を 元教員の画家、東さん(十和田)

子どもらへの絵の指導に情熱を注ぐ東信昭さん=16日、十和田市
子どもらへの絵の指導に情熱を注ぐ東信昭さん=16日、十和田市

教員の道に進む際、先輩である父からもらった助言が今も耳に残る。

 「学級の生徒一人ずつの良いところを、すぐに三つ答えられるように」「常に良いところを探そうとする教師の目こそが、生徒との信頼関係を築く教育の第一歩だ」

 十和田市の画家、東信昭さん(67)は元美術教諭。父昭雄さん=享年(79)=の教えを胸に、障害がある子どもらに今も絵画指導を続けている。

 きっかけは1994年4月、39歳の時に赴任した青森県立七戸養護学校での出来事。「絵を描きたい」と目を輝かせ、高等部3年の4人が自主的に制作した作品に心を揺さぶられた。

 校内の教員だけでなく、専門家に評価してもらうため、全国公募展に出品した。一人が新芸術展に入選し、もう一人は新洋画会展の新人賞を受賞。健常者と同じ土俵で認められた。

 「障害の有無は絵を描く上で何も関係ないんだ」。いかに原石を発見し、才能を伸ばすことができるか。自分自身も絵を描き続け、失敗や痛みを共有しようと考えた。

 転勤で他校に4年勤務した後、2001年4月に再び七戸養護学校へ。来校した卒業生の一言がうれしかった。「お帰りなさい。また先生と絵を描きたい」 教え子たちは既に社会人になっていた。仕事が休みの土曜に制作活動が始まり、05年1月には初のグループ展を開催するに至った。

 14年に定年前の58歳で退職し、自宅に「アトリエのぶ絵画教室」を構えた。趣味で楽しむ人、美大や芸大を目指す受験生らを指導。さらに、三沢市とおいらせ町にある施設に出向き、知的障害がある子どもに絵を教えている。

 本年度、長年の活動が認められ、「障害者の生涯学習支援活動」の功労者として文部科学大臣表彰を受けた。

 絵は心の表現。はっきりした答えはない。「生きる力につなげてほしい」。無限の可能性が広がる子どもたちの作品に目を細めた。

 
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