Free【猿楽の旅音日記】⑰二戸の冬

白く染まった二戸市の山林の雪景色(楽曲のMVより)
白く染まった二戸市の山林の雪景色(楽曲のMVより)

二戸市地域おこし協力隊の猿楽さんは、市内の風景や文化を音楽で表現する「旅音プロジェクト」を進めている。音楽家の感性で捉えた二戸の印象を、曲のイメージと共に紹介する。

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 岡山県生まれの僕にとって、北東北生活で印象深かったのは、やはり雪景色だ。冬になると二戸の風景は白一色に染まり、夜は世界が静寂に包まれたような気持ちになる。

 移住して初めての冬は見るもの全てが目新しく、市内のあちこちを車で走った。田畑や家々が雪で覆われた光景は、冬の太陽に照らされ、まぶしくも美しかった。

 ある日、浄法寺の山あいまで行ってみた。見渡す限り白銀の世界を進む。途中で、車通りが少なそうな旧道に入った。

 脇には民家がポツポツと立っていたが、緩やかな山道を上るうちに、それも見えなくなった。やがて、日本の冬の原風景とも言えるような場所に出た。

 奥深い山林の木々に雪がかぶさり、時々バサッと音を立てて落ちてくる。その光景から音のイメージを感じ取り、車を路肩に止めた。楽器を手にし、感じるままに曲を作った。

 こういう心を動かされた瞬間を、音に閉じ込めたいという思いは、二戸の風景や文化をテーマに曲を作る原動力になっている。音楽を通じ、誰かと感動を共有できたら、なんてすてきなことだろう。

 そして、完成した曲が地域の魅力発信にもつながれば、これ以上ない喜びだ。僕の音楽世界に共感してもらった方たちが曲を聴き直すたびに、二戸の風景も思い起こしてもらえるとうれしい。

 しんしんと雪が降り積もる山林で作った今回の曲。二戸の冬の美しさをイメージしながら、静かな気持ちで聴いていただきたい。(猿楽)

 ※毎月第2、第4火曜掲載。タイトル曲などのミュージックビデオ(MV)は、猿楽さんのサイト「にのへの旅音」で順次公開する。

 
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