Free【猿楽の旅音日記】⑭組曲 奥南部漆物語 三章~木地師~

ぬくもりが感じられる木地作りの現場(楽曲のMVより)
ぬくもりが感じられる木地作りの現場(楽曲のMVより)

漆器の基となる、おわんやお盆などの木製器を制作する人を木地師と呼ぶ。原木を削り出し、塗師〈ぬし〉(塗りの担当)がデザインした器の形に仕上げる職人だ。

 昭和の初めには安比川流域に130人ほどいたそうだが、今は数えるほどしかいない。岩手県八幡平市の博物館を訪れ、昔の優れた木地師の映像を見た。制作された器が床一面に置かれている場面があり、かつての盛況ぶりが感じ取れた。

 組曲の第三章は二戸市浄法寺町にある、木地作りの作業場(滴生舎〈てきせいしゃ〉の木工室)で曲作りをした。中に入ると、初めて見る機材がたくさんあり、木の香りが部屋いっぱいに広がっていた。

 丸太から器の形になるまでにはさまざまな工程があるが、僕は仕上げの工程を見学し、作業場の空気感を含めて音楽にした。

 作る器に合わせて適度な大きさに切った木に、目印となる線を書き入れ、ろくろに取り付けて刃物で削り出す。ただの木の塊だったものが、見る見るうちに器の形へと変わっていく。

 地域の風景と文化を愛する音楽家としては、いつまでも見ていられるくらい、その作業光景は楽しく美しいものだった。

 より美しい形を模索し、器を作り続ける木地師たち。一つのことを追求し続ける姿は、虚空に音符を並べるようにして音楽を作り出す作業と、どこか似ているのかもしれない。

 現場の空気はほんのり温かく、木のぬくもりとものづくりへの情熱が心地よく混ざり合い、一つの優しい世界をつくり出していた。

 楽曲も、そんな温かさをじんわりと感じ取れるようなものに仕上がった。柔らかな木漏れ日の中で、器を手にするようなイメージで聴いていただきたい。(猿楽)

 ※毎月第2、第4火曜掲載。タイトル曲などのミュージックビデオ(MV)は、猿楽さんのサイト「にのへの旅音」で順次公開する。

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