Free(2)消費者物価 武藤一郎・日本銀行青森支店長

青森に赴任して約4カ月。美しい自然、豊かな文化、温かい人々に囲まれて充実した毎日を過ごしている。最近も八甲田に登山し、だいだい色の紅葉に目を奪われたり、津軽では収穫期を迎えたみずみずしいりんごを食したり、八戸では朝焼けのまぶしい港で市場のにぎわいに触れたりと、当県の醍醐味(だいごみ)を味わっている。青森のあふれる魅力についてさらに筆を進めたいが、足元の物価上昇が当地(青森県)でも大きな関心事であるため、今回はこの点を解説する。

 現在わが国で生じている物価上昇は、国内需要の高まりを映じた物価上昇ではなく、輸入品の価格上昇を主因とするコストプッシュ型のインフレである。当地も基本的に同様だが、9月の消費者物価(CPI)をみると、総合指数の前年比が全国でプラス3・0%であるのに対し、青森市はプラス4・0%である。つまり、当地の物価上昇率は、わが国全体よりも1・0ポイント高い。

 この差の主な背景は、当地では食料品とエネルギーの価格上昇の影響が全国と比べ大きいことにある。まず当地では平均所得の低さを映じて家計のエンゲル係数が高く、全国対比で消費支出に占める食料品のウエートが高い(青森2795、全国2626〈1万分比、2020年基準〉)。

 このため、食料品が大きく値上がりする今、当地のCPIは全国よりも伸びが高まりやすい。また、車社会でガソリン需要が多く光熱費負担も重い当地では、エネルギーの消費ウエートが大きい(青森996、全国712〈同〉)。これもCPIの伸びが高めとなる理由となる。

 もっとも、これはあくまで統計上の物価指数の動きの差の説明に過ぎず、実際に家計が感じる物価上昇の度合いはCPIとも異なる可能性がある。注意すべきは、CPIは各品目のウエートが基準年の値で固定される「ラスパイレス指数」である点だ。

 つまり、消費者が時々で支出の中身を変えても、そのことはCPIに反映されない。しかし、実際の消費者の支出ウエートは季節によって異なり、特に豪雪地域である青森では冬場の暖房需要が大きく高まる傾向にある。

 総務省「家計調査」で可処分所得に占める光熱費の割合をみると、青森市は20年からの平均で5・2%と全国(3・5%)よりやや高い程度である(図参照)。しかし、青森市の光熱費割合は季節によって大きく異なり、夏場は3%程度である一方、冬場には10%近くまで高まる。

 さらに、冬場の負担は積雪量の影響も受け、著しい豪雪だった昨冬は12%に達した。全国では冬場でも5~6%までしか高まらないため、当地における冬場の光熱費負担は全国対比で非常に重いといえる。

 統計上の物価指数では、こうした季節的な消費支出の変化が織り込まれないため、青森のように四季の変化が明瞭な地域では、家計の実感と乖離(かいり)が生じてしまう。こうしたことから、今後、冬場を迎える中で当地の人々が実感する物価上昇は、報道されるCPIの数字以上に高まる可能性が高いだろう。

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