Free【猿楽の旅音日記】⑬組曲 奥南部漆物語 二章~漆搔き~

曲作りのイメージを得た、漆搔き作業の現場(楽曲のMVより)
曲作りのイメージを得た、漆搔き作業の現場(楽曲のMVより)

組曲・奥南部漆物語の二章は、二戸市の漆搔(か)き職人の作業現場で作曲した。移住前に二戸のことを調べていて、国産漆の日本一の産地であることを知った。

 当時、僕が漆という言葉から真っ先に思い浮かべたのは艶やかな漆器だった。原料の漆がどんな物で、漆搔き職人がどう関わっているかは想像の外にあった。

 移住して間もなく、日本うるし搔き技術保存会に所属する地元の職人から、搔いた漆を入れる「タカッポ」という手作りの容器を頂いた。家の玄関にオブジェとして飾ると、漆搔きへの興味は日増しに高まった。

 曲作りには別の若手職人が協力してくれ、現場に連れて行ってもらった。足場を組み、木に少し傷を付け、違う木に移り同じ作業を繰り返す。良いタイミングで漆をタカッポに入れる。

 大切な漆を1滴も採りこぼさないよう、丁寧に慎重に進める。職人の作業風景は、理屈抜きに美しい。僕は邪魔にならないよう、楽器を持って歩き回り、音のイメージをつかむ。

 最後に採れた漆を見せてもらったが、タカッポの下の方にほんの少しだけ。このために何時間も汗をかき、ひたむきに作業しているんだなと感動した。

 楽曲は、木々の間をさっそうと移りながら作業する職人と、美しい漆の森のコントラストを軽妙洒脱(しゃだつ)に描いた。木々と向き合い、漆を採り続ける職人の姿を思い浮かべながら聴いてほしい。(猿楽)

 ※毎月第2、4火曜掲載。タイトル曲などのミュージックビデオ(MV)は、猿楽さんのサイト「にのへの旅音」で順次公開する。

 【日本うるし搔き技術保存会】
 二戸地域を中心とした会員で構成。伝統技術の継承と錬磨に取り組む。二戸市の漆搔き技術を含む「伝統建築工匠の技」は2020年12月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録された。

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