Free【猿楽の旅音日記】⑫組曲 奥南部漆物語 一章~漆の森~

神秘的な雰囲気に包まれた漆の森。組曲の漆物語はここから始まる(楽曲のMVより)
神秘的な雰囲気に包まれた漆の森。組曲の漆物語はここから始まる(楽曲のMVより)

今回から「奥南部漆物語」と題し、五章編成の組曲をお届けする。二戸市と岩手県八幡平市を流れる安比川流域には昔から多くの職人が住み、浄法寺漆を誇りにしながら、漆器作りの伝統技術や漆文化を紡いできた。その物語は文化庁から日本遺産に認定され、両市が地域の魅力発信につなげようと取り組んでいる。

 僕は二戸市浄法寺町で伝統文化の一端に触れ、二戸が日本一のシェアを誇る漆と、それを支える職人の存在を知った。組曲は浄法寺町を中心に、漆器作りに関わる職人の姿や地元の街並み、漆の森などの風景をイメージしながら展開する。

 全五章は「漆の森」「搔(か)き」「木地」「塗り」「苗」で構成する。奥南部漆物語を文化として深く掘り下げるのではなく、旅人である僕の目線で、全体で一つの風景を描くような音楽作品を目指した。

 一章では北東北の厳しい自然の中で、漆文化を大切に守りながら生き抜いてきた職人たちに思いをはせながら、漆の森の全景を表現してみた。曲は厳かな雰囲気でゆったりと始まり、物語の導入部にふさわしい仕上がりになったと思う。

 漆の森の息吹と、職人たちの生き方をイメージしながら、旅人の気分で聞いてもらいたい。そして、できれば浄法寺町へ実際に足を運び、漆器を手に取って、美しさと質感を音楽と共に五感で感じてほしい。(猿楽)

 ※毎月第2、4火曜掲載。タイトル曲などのミュージックビデオ(MV)は、猿楽さんのサイト「にのへの旅音」で順次公開する。

 【奥南部漆物語】二戸市と八幡平市が文化庁に共同申請し、2020年に日本遺産に認定された。安比川流域の木地師や塗師(ぬし)、漆搔きが一体的に漆器製作を行い、伝統技術を継承してきた―という漆を軸にしたストーリーや、取り組みの持続性などが評価を受けた。

 
お気に入り登録