Free作者・呉さんに感想や質問 『爆弾』テーマ 八戸で読書会

呉勝浩さん(奥左)を囲み、さまざまな意見を出し合った読書会=12日、八戸グランドホテル
呉勝浩さん(奥左)を囲み、さまざまな意見を出し合った読書会=12日、八戸グランドホテル

八戸市読書団体連合会(種市良意理事長)は12日、八戸グランドホテルで、作家呉勝浩さんを囲む読書会を開いた。テーマ本は直木賞候補作『爆弾』で、参加者約40人が感想や質問を率直に作者へぶつけ、作品への理解を深めた。

 『爆弾』は、スズキタゴサクを名乗る中年男が「予言」する東京都内での爆破事件を巡り、タゴサクと警察がスリリングな心理戦を展開するミステリー。卑屈な態度を見せながらも鋭く切り込むタゴサクの言説は、登場人物たちの“正義”を揺るがしていく。

 感想発表では、参加者から「映画のように場面が想像でき、面白かった」「タゴサクは不気味でいらいらさせられた」「爆弾と拳銃の違いはあるが、元首相銃撃が連想させられた」「事件に巻き込まれたときどう行動するか考えさせられた」などの意見が出た。

 爆破事件に巻き込まれた女子大生が、倒れたお年寄りにスマートフォンのカメラを向けた場面について、「インターネットにアップするんだなと思った。自分の醜さもあらわにされた」という声も上がった。

 呉さんは、警察側に明確な主人公を立てず群像劇にした理由について「人間は良い方にも悪い方にも簡単に転ぶ。登場人物それぞれが自分の中の危うさにラインを引き、そこで踏みとどまってほしい。強力なタゴサクに負けない方法がそれくらいしか浮かばなかったし、『踏みとどまる』というのは自分の中で重要なこと」と強調した。

 市内から参加した古戸美保さん(70)は「作家のお話を直接聞けてとても有意義だった。八戸出身の呉さんを今後も応援していきたい」と話していた。

 
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